オールアバウト執行役員が語る「知られざる人材輩出企業」JTBのOJT

アルムナビによるスペシャルインタビュー。今回は、JTBへ新卒入社し、オールアバウトに転職後、第二新卒という立場から若干35歳の時に執行役員へ登り詰めた、箕作聡さんへインタビュー。

PROFILE

株式会社オールアバウト 執行役員 メディアビジネス本部長
箕作 聡(みつくり さとし) 

明治大学卒業後、2004年にJTB法人東京に入社。2006年、オールアバウトに転職。新規事業での顧客開拓のほか、グループ会社での紙媒体の広告営業を経たのち、総合情報サイト「All About」のデジタル広告ソリューションの提案に長らく従事。現在、執行役員 メディアビジネス本部長。

人気ナンバーワン企業には、かっこいい奴が集まる

———これまでメディア上では、広告やマーケティングの文脈でのインタビューが多く、新卒で入社された、JTB 時代の話はあまり語られていませんでした。いったいどんな経緯で入社されたのでしょうか。

就職活動にはそんなに熱心ではなかったので、ちゃんとした自己分析の結果、JTBにたどり着いたわけではないんです。

なんと言っても当時、JTBは「就職人気企業ランキング1位」だったのが大きかったです。人気ナンバーワン企業に入社するのは、単純に「かっこいい」、そんな考えから。もちろん、旅行は大好きでしたよ(笑)。

実際、同期だけでも、競技人口の多いスポーツしかり、人気ナンバーワン企業の選考を通過した連中だけあって、すごい奴が150人集まっていた感じ。「旅行が好き」な以上に、何より「人を楽しませるコトが好き」な、「かっこいい奴ら」ばかりという印象でした。

———「かっこいい」に惹かれた先の話として、JTBに入社してやりたいことはあったんですか?

僕はJTBを「旅行というモノ」を売る企業ではなく、「楽しいコト」を売る企業、ある意味、「イベント会社」のようにとらえていたんですね。それも、「社会の課題を地域交流を通して解決する」みたいな他ではできない「大きなコト」を成し遂げられるところだと。

当時は「911」直後で、僕の中には「ニューヨークを元気にしたい」という想いがありました。それなら、たとえば「グラウンド・ゼロ」で、日本企業が神輿を担ぐようなお祭りを通して、元気を与えられるんじゃないか、なんてプランを企んでいたんです。

JTB なら、それに伴う人の行き来を含めて、単発では終わらず、サステナブルに文化交流ができるじゃないですか。

———実際、JTB 社内ではそういった「コトづくり」は実現できるものなのですか?

はい。保険会社の販売員の方を、全国から一箇所に集めて決起集会を行い、そのまま成績に応じた報奨旅行へ、という一大行事を一人で取り仕切っている先輩や、音楽フェス開催にあたって数十万人規模の輸送・宿泊面を担っている先輩のような方々はいましたので。

今でも時々、JTBの人事情報をチェックしているのですが、先のお二人の先輩は出世していましたね。

JTBの添乗現場では、すでにハイフェッツ教授のリーダーシップ論が実践されていた

———そんな想いで入社された JTB で、学んだこと、得たものはありますか?

もしかしたら僕たちの世代までの「あるある」かもしれませんが、まず思い出すのは、新入社員研修で、日本と世界の地理を叩き込まれたり、時刻表の読み方・引き方を訓練したりしたことですね。特に時刻表は個人的にも性に合ったのか、乗り換え案内アプリの時代になった今でも、使いこなせるのは、ひそかな自慢です(笑)。

こうした研修以上に、JTB の真骨頂はやはり OJT。JTB は人気だけじゃなく業界ナンバーワンのプライドも相まって、ホスピタリティに対する姿勢が段違いなんです。「じっと 立ってる バカ(J・T・B)になるな」とよく言われたのですが、常に多角的に考えながら動く癖がつきました

現在オールアバウトでは、ハーバード大学のハイフェッツ教授が考案した「リーダーシップ講座」を研修で採用しているのですが、そこに「ダンス・アンド・バルコニー」という言葉があります。

それは、「リーダーは現場(ダンスフロア)での実践と、客観的で俯瞰的な視点(バルコニーからの視点)の双方を絶えず高速で行き来する必要がある」という考えなのですが、これってまさにJTBの添乗業務で日々実践していたこと。空気を作り、ルールを作り、最終的に秩序を作る、というのは、まさに癖になるレベルまで叩きこまれていましたね。

———あまりイメージできていないのですが、JTB における「添乗」ってどんな仕事なんでしょうか?

たとえば法人旅行の宴会では、まずは仲居さんの指揮、お手伝いから始まり、いざ宴が始まれば、自らお客様へお酌をしたり、請われれば、カラオケで盛り上げたりしつつ、横目では次の進行への準備・給仕状況など、裏舞台へも同時に意識を向けるなんてことをしていました。

そのカラオケ一つとっても、盛り上げなくてはならないものの、逆に盛り上げ過ぎて、お客様たちを差し置いて主役になってはいけない、というバランス感覚も求められるんです。そういった点は、「翌日のバスで添乗員の話題が出てはいけない」と具体的な言葉で指導されていました。僕はついついやり過ぎちゃって、主役になりがちだったので(笑)

これは、まさに象徴的なんですが、JTB はあらゆることを言語化しているんですね。普通、接待での振る舞い方なんて、「背中を見て育て」みたいな感じですよね。実際、ITベンチャーにはないノウハウでしょうし、若い方が自己流で試行錯誤しても難しいもの。

JTB では添乗自体が接待であり、マーケティングであり、コアコンピタンスなんですね。そして、これが今でも僕の中で、間違いなく息づいています

JTBの「察しなさい」という教えが、オールアバウトでの営業/マネジメントに通じた

———話を伺う限り、添乗員としてのスター性も容易に想像できますが(笑)、退職して異業種のオールアバウトへと転じたのはどんな経緯だったのでしょうか。

若さゆえだと思いますが、大企業ならではの「制約」が不満になってしまったのが大きいかもしれません。それこそシャツの色の暗黙のルールとか(笑)。自分の美学における「かっこよさ」とだんだん乖離してきてしまったんでしょうね。

はじめ、転職先としては外資の化粧品メーカーを検討していました。当時まだ芽生え段階だった男性向け化粧品を世の中にしかける、というかっこいいコトを企んでいたんです。先ほどの「海外で御神輿」みたいな考えを実践するには、プロモーションやマーケティングの観点からのほうが近道なんじゃないかとも思いまして。

もしかしたら、当時インターネット旅行代理店が台頭し始め、JTB の個人旅行の牙城が脅かされつつあったのが頭にあったのかもしれません。それでインターネット分野にも目を向けたところ、オールアバウトに出会い、ピンときたんです。

———「かっこよさ」では、外資系化粧品のお話はとてもわかりやすいですが、それをひっくり返すあたり、オールアバウトのどこにピンときたのでしょうか?

一言で言うと、オールアバウトが「かっこいい会社」だったからです(笑)。頭が良い経営者はいっぱいいる中で、社長の江幡(哲也氏)ほど、「かっこよさ」を兼ね揃えている人はなかなかいませんでしたから(笑)

———どこまでも新卒の就活の時同様、「かっこよさ」が決め手なんですね(笑)

なんて「かっこいい」こと言いましたが、JTB の辞め方自体、後悔が残るもの、申し訳ないものだったとは思っているんです。ふとした時に、そんな複雑な想いを抱えていることに気付きます。こんな風に後付けで、かっこつけた転職理由は思い浮かぶわけですけどね。

———時間が経ったからこそ、古巣への想いを冷静に受け止められるようになったのかもしれませんね。そして、ここからオールアバウトでの躍進が始まります。

この広告営業が天職だったんでしょうね。当時まだ新規事業だったある部署の営業として、入社翌月からトップセールスになり、続く雑誌広告の営業でも、普通じゃ売れないだろうという状況を跳ね返して自分だけは売り、ネット広告に移ってからも即座に大型の企画を決めるなど、トップセールスになりましたから(笑)

この活躍は個人的な素養もあるとは思うのですが(笑)、JTB 時代に散々「察しなさい」って言われたのが役立っているんじゃないかと。この「察する」ってスキルは、営業はもちろん、マネジメントもそうですし、何なら「恋愛」にだって欠かせないものだと思うんです。

営業で言えば、その本質って、実は「相手に売りつける」というより、「相手を巻き込む」ほうが近いと思うんです。そして巻き込むためには、「察して」、多角的に相手の状況を捉える必要があるわけです。

マネジメントも同じ。それぞれ方向性の違うメンバーたちの、それぞれ異なる想いを「察して」、コミュニケーションを重ねて、「ジブンゴト」化させて、最終的に同じ方向を向かせてはじめて、「行くぞ!」と号令をかけられるものですから。

広告営業のプロが周り回ってたどり着いた、インナーマーケティングの極地

———オールアバウトで営業をする中で、古巣の JTB には行かれたのでしょうか。

はい、ありがたいことに、JTB にも広告を出稿していただいているので、担当していた時期はあります。さすがに現職時代の知り合いが担当者ということはありませんでしたが。

すべての広告主様の成功のために尽力するのは前提と断らせていただいたうえですが、あくまでも個人的な思い入れとしては、JTB の案件は、特に「ジブンゴト」しちゃうので、成功させたいと意気込んでいたと思います。

———やはり、古巣は特別な存在なんですね。

先ほども言いましたが、JTBの業績や人事情報は今でも節目節目で見てしまいます。そして業績を見るたび、「もし今、僕がJTBにいたら何ができるかな?」なんてことは、頭を巡りますね。まあ、JTB ではできなかったことを、オールアバウトで昇華して実現しようと思いながら仕事しているわけですが。

一方で、天職の広告営業に長年携わる中で、ここにきて周りまわって、インナーマーケティングの重要性にたどり着いたんです。そのインナーマーケティングを徹底的にやっている会社っていうのが他ならぬ JTB

モチベーション・マネジメントというものは、とても奥が深い世界ですが、JTB は歴史的に、培った知見とノウハウをどこにも負けないくらい蓄積しています。なんなら JTB がモチベーションのラボを作ってもいいんじゃないかと思うくらいです(笑)

人材輩出企業=JTBの生き証人としてアルムナイはもっと胸を張るべき

———それくらいすごいことなのに、JTB の中にいるとなかなか気付けないものなんですね。

はい、気付いていないと言えば、人材の優秀さもそう。JTB の現役社員、アルムナイ問わず、その基礎能力は、めちゃくちゃ高いと思っています

特に営業力であれば、総合広告代理店の方々にも負けないでしょう。人気ナンバーワン企業に集まった、人を楽しませることが大好きな人たちが、お客様に深く踏み込む日常で鍛えられているわけですから。

だけど、それが知られていないのは、すごくもったいないことだと思います。実際、アルムナイには、起業家もいるし、ネット系企業をはじめ最先端の現場で活躍しているのを耳にしますし。

———人材輩出企業なのに知られていないのですね。たしかに失礼ながら、JTB にはそういうイメージはありませんでした。

特に中の人たちがそれに気付いていないんですね。JTB という会社のすごさ、教育のすごさ、スキルの高さ、仕事の価値の高さをもっと誇って欲しいです。

実は、オールアバウトには、僕以外にも JTB アルムナイが1人いるのですが、彼も違わず優秀ですから。

何より僕自身、JTB で培ったものがいっぱいあります。今の自分があるのはあの時期があるからです。胸を張って誇れるキャリアですし、感謝の気持ちしかありません。

最近、すごく厳しくて僕が常々ビビっていた新人時代の上司からも、突然 Facebook で申請が来たんです。このインタビューと言い、これはもっと JTB アルムナイみんなで団結して、その企業としてのすごさ、その優秀っぷり、人材輩出企業っぷりを今こそアピールしろって契機なのかもしれませんね。

オールアバウトは出戻り歓迎。だから、アルムナイも気軽に立ち寄る

———箕作さんをはじめとした JTB アルムナイがネットワークを築いて、そして、ゆくゆくは、JTB とのリレーションが築けると、また新しい「コトづくり」につながっていくかもしれませんね。一方で、オールアバウトでは、アルムナイとのリレーションづくりにどんなことをされていますか。

実は、いろいろやっているんです(笑)。まず、大きなところでは、2016年2月に、移転したばかりの現オフィスにて、創業15周年パーティーを開催したのですが、新旧アルムナイも招待した結果、30名ほどの参加がありました。

2016年02月開催 創業15周年パーティーの模様

他にも、野球部、料理部、ゴルフ部、フットサル部など、会社公認の部の活動には、毎回何名かのアルムナイが参加し、交流を図っています

こうした取り組みに顕れているように、オールアバウトは「出戻りも歓迎」というカルチャーが浸透していて、出戻りは、執行役員をはじめとした役職者を含む10名ほどの実績があるんです。

———実際に今現在、アルムナイ・リレーションを築いているからこその説得力がありますね。JTB アルムナイ・ネットワークも期待しています。本日はインタビューありがとうございました。

>>オールアバウトの詳細はこちら

編集後記

これまで各種メディアで拝見した箕作さんのイメージは、「ワイルドな営業の鬼」というイメージで、正直ちょっとビビっていました(笑)。しかし実際にお話を伺ってみると、柔らかい空気を作り出し、みごとに場を「楽しいコト」にしていました!

「JTB ではできなかったことを、オールアバウトで昇華して実現しようと思いながら仕事している」とおっしゃっていましたが、箕作さんが就活時代から思い描いていた「コトづくり」が、「人」が主体であるオールアバウトのビジネスにおいても、息づいているのでしょう。

企業と人のアルムナイ・リレーションを考える際は、「モノ」のようなわかりやすいメリット以上に、エモーショナルな「コト」が重要になってきますが、それを無意識下でもクリアできているのは、オールアバウトが「コトづくり」のプロ集団だからこそで、結果、そのアルムナイ・リレーションが太い絆を生み出しているのかもしれません。(アルムナビ編集長・勝又 啓太)