アルムナイとは?企業と退職者が関係性を築くメリット・デメリット

人事・HR領域で、企業の退職者や卒業生を意味する「アルムナイ」という言葉が注目を集めています。注目されている背景や、ビジネスパーソンと企業にとってのメリット・デメリット、アルムナイと企業の関係性の築き方など、それぞれについて詳しくご紹介します。

アルムナイとは

アルムナイ(Alumni)とは、「卒業生」を意味します。ラテン語を語源とした英語で、従来は大学の卒業生を表す言葉として使われていました。

そこから転じて、人事領域では「企業の卒業生」や「OB/OG」「退職者」を意味します。

アルムナイが注目される背景

これまでは終身雇用を前提とした雇用制度や慣習のもと、「1社に生涯勤める」のが当たり前でした。

ところが「人生100年時代」と言われる今、企業は終身雇用制度を維持できなくなりつつあります。2019年には経団連会長やトヨタ自動車社長が「終身雇用を守るのは難しい」と明言するなど、いよいよ「1社に一生勤める時代」の終わりが見えてきました

同時に、個人の価値観や人生設計の多様化も進んでいます。転職が前提となり、人材の流動化が進むと、ビジネスパーソンのキャリアの自由度は増していきます。ただし、これは言い換えれば「不安定性が高まる」ということでもあります。

一方、企業にとっては優秀な社員を自社に留め続けるのが困難になります。さらに日本は少子高齢化で、この先の労働人口は減っていきます。長期的に見れば売り手市場が続くであろう中、企業が優秀な人材を新しく採用し続けるのも現実的ではありません。

つまり企業にとって「社員の退職が増え、新規での採用が難しくなる」ことは明確です。

そこで注目されているのが、「アルムナイ」です。

アルムナイと企業が良好な関係を築くことは、不安定性が高まる社会の中でキャリアを築く個人にとっても、人手不足に悩む企業にとっても、さまざまなメリットがあります。

アルムナイと企業がつながるメリット

転職が当たり前の社会で、複数の会社を経験しながらキャリアを築いていく。それは言い換えれば、ビジネスパーソンのほとんどが「どこかの会社のアルムナイになる」ということ。そして企業にとっては「自社のアルムナイが増える」ということです。

では、アルムナイと企業が良好な関係を築き、退職してからもつながりを持ち続けることにはどのようなメリットがあるのでしょうか? ビジネスパーソンと企業、それぞれの視点から紹介します。

ビジネスパーソンのメリット

先述した通り、雇用が流動的になるということは、不安定性も高まるということ。そんな中で古巣の企業と関係性を持ち、交流を続けることは「キャリアのセーフティネット」になります。

メリット1. 仕事をもらいやすい

古巣の会社は、起業やフリーランスなど独立した人にとっては仕事を得やすく、会社員として転職した人にとっては、副業に挑戦する際にオススメです。

企業にとってアルムナイは「自社のことをよく知る外部の人」です。外部の会社に仕事を依頼するよりも、自社のサービスや仕事の進め方をよく知っているアルムナイに依頼した方が仕事はスムーズに進むもの。

アルムナイにとっても、新しくその会社もやり方を覚えたりサービスについて調べたりする必要がなく、また知っている人と仕事ができることも多いため、仕事がしやすい利点があります。

企業はアルムナイの実力への理解があり、アルムナイも単価のイメージがしやすいため、ギャラなどの条件交渉がしやすいメリットもあります。

さらに、「かつて同じ職場で働いていた」という共通点があるぶん、仕事を依頼しやすいというのは、アルムナイ同士にも当てはまります。「古巣の企業」だけでなく、「古巣で働いていた人」ともつながりを持つことで、セーフティネットはより強化されます。

メリット2. ベストな働き方を実現しやすくなる

サービスや業務は好きなものの、会社のカルチャーや人間関係に不満がある。こういうとき、これまでの選択肢は「辞める」「自分が変わる」「会社を変える」「我慢する」でした。

ところが、今は「”アルムナイの外部パートナー”という立場で仕事をする」という選択肢が新たに出てきました。

外部パートナーなら、会社と対等な関係性で居やすく、ほど良い距離を保ちながら、好きな仕事だけを手掛けることが可能になります。

メリット3. 再入社の可能性がある

自分の考え方やライフステージの変化によって、希望の働き方も変わります。退職して時間が経ったことで、古巣の企業が「今の自分にとってのベストな職場」になることもあり得ます。

もちろん企業の状況にもよるので必ず再入社ができるわけではないですが、「再入社の可能性がある会社」があることは、いざという時の安心材料になるもの。

また、ゼロから仕事を探して全くの新しい職場で働くよりも、古巣の会社に再入社する方が職場や仕事に慣れやすいという効果も。働き方の実態をイメージしやすいため、ミスマッチを防ぐことにもつながります。

企業のメリット

「アルムナイとのネットワーク創り」に関心を持つ企業は年々増えています。その理由はさまざまですが、取り組みをスタートした企業が感じている代表的なメリットは以下の通り。

メリット1. アルムナイがアンバサダーになる

自社の顧客になったり、サービスの評判を広める営業や広報のような役割を担ってくれたり、リファラル採用につながったり。自社への理解が深いアルムナイは強力なアンバサダーになってくれます。

メリット2. ビジネス連携がしやすい

過去に自社で働いていた経験を持つアルムナイ。ただの外部業者に仕事を発注するよりも、サービスへの理解や内部事情に精通しているぶん、仕事がスムーズに進みます。また、自社の文脈を踏まえた情報提供をしてくれるので、有益な情報源にもなってくれます。

メリット3. 再雇用につながる

採用難の今、注目を集めるのが再雇用制度。「ジョブリターン制度」や「カムバック制度」と言われることもあります。

制度を用意しただけではなかなか実際の再雇用にはつながりませんが、普段からアルムナイと接点を持つことでお互いの状況が見えるようになり、アルムナイの再入社へのハードルを下げることができます

メリット4. 企業ブランディングになる

退職を機に縁が切れてしまう会社がまだまだ多い中で、退職者を応援し、ポジティブに捉える企業の姿勢は好意的に受け入れられています。

アルムナビが大学生・大学院生を対象に実施したアンケート調査では、企業の退職者への態度が「学生の企業への好感度」に影響を及ぼしていることが見えてきました。

>>「企業の退職者への態度」が「学生の企業への好感度」に影響する! 定年まで勤めたい人も8割以上が「退職者=裏切り者な会社は悪印象」と回答

メリット5. 現役社員にポジティブな効果がある

過去のアンケート調査で、「アルムナイとつながったことで、よかったと思うことはありますか?」という質問に「ある」と答えた人は84.3%にも登りました。

「モチベーションが上がった」「自社で働いていることに自信が持てた」など、社員がアルムナイと交流を持つことによってさまざまな効果があることがわかっています。

>>退職者との交流が「自社で頑張るモチベーション」になる?アンケートで見えたアルムナイとつながり続けるメリット

メリット6. ネガティブな退職を減らすことができる

「辞めても関係性が続くのは当たり前」という企業文化があるということは、不義理な辞め方がしにくくなるということ。突然会社に来なくなる、引き継ぎが十分にされないなど、企業にとってマイナスな退職の事例を減らすことにもつながります。

アルムナイと企業がつながるデメリット

続いて、アルムナイと企業がつながり続けることのデメリットについて紹介します。

ビジネスパーソンのデメリット:ない?

古巣の企業とつながりを持ち続けることで煩わしさを感じるなどマイナス面がないわけではないですが、そう感じる会社とは距離を置けばいいだけのこと。すでに雇用関係はないわけですから、関係性を持ち続けるかも、どういう距離感で付き合うかも、自分で決めることができます。

そもそも、ほとんどの人がSNSアカウントを持ち、またリファレンスチェックをする会社も増えつつある中、過去の人間関係を完全に断ち切るのは難しくなりました。さらに人生100年時代にキャリアが長期化することで、思わぬところで過去の同僚や上司とつながる可能性も増していきます。

ブラック企業など、退職後も付き合いたいと思えない会社と無理につながる必要はないですが、そうでなければ自分にとって負担にならない距離感で古巣の会社と関係性を保つことを考えた方がメリットは大きいと言えます。

企業のデメリット:退職リスクが増す?

企業がアルムナイとの関係構築を検討する際に懸念となるのが、「退職リスクが増すのではないか」ということ。

ところがアルムナビのアンケート調査では、アルムナイとつながりたい理由で「転職を含め自分のキャリアについて相談したいから」と回答した人は13.5%と少数。

むしろ自分の仕事を見直したり、モチベーションアップになったりと、「アルムナイとの交流が目の前の仕事を頑張る糧になっている」という意見が多く見られました。

>>退職者との交流が「自社で頑張るモチベーション」になる?アンケートで見えたアルムナイとつながり続けるメリット

もちろん、アルムナイと接点を持つことで退職につながる可能性はゼロではありません。ただ、先述の通り、人材の流動化が進むことで自社の退職者が増えるのは明白です。かつて一緒に働いたアルムナイと思わぬところで再会する可能性も増しています。

それであれば、まだ他社が取り組んでいない今の段階から関係づくりに始めた方がメリットは大きいともいえそうです。

「アルムナイと企業の関係性」のつくり方

では、アルムナイと企業の関係性はどのようにつくればいいのでしょう? ビジネスパーソンと企業のそれぞれの観点から、フェーズごとにやるべきことを見てみましょう。

ビジネスパーソンがすべきこと

在籍中】「一緒に仕事がしたい」と思ってもらえる人になろう

退職後にも長期的に古巣の会社と関係性を築くためには、大前提として「長く付き合っていきたい」と思われる人になる必要があります。普段の仕事を通じて、「どう働けば一緒に仕事がしたいと思ってもらえるか」を意識することが重要です。

その際、ハードスキルも大切ですが、それ以上に重要なのがソフトスキルです。コミュニケーション能力や共感力などは、普遍的なもの。どれだけテクノロジーが発達しても、代替されることはありません。

退職時】嘘をつかず、真摯に辞める

「どうせ辞めるから」という姿勢では、退職後に良い関係は築けません。怒られたり責められたりすることを恐れて嘘の退職理由を伝えてしまう人もいますが、ほとんどの場合、あとで嘘だとバレるもの。結果的に応援して送り出してくれた人を裏切ることにもなってしまいます。

大切なのは、円満退職しようとする姿勢です。誠実に向き合い、正直に気持ちを伝えていれば、たとえ喧嘩別れになってしまっても、時間を置いて再び関係性を復活できるチャンスはあるものです。

>>他の人の「会社の辞め方」の事例を見る

【退職後】アルムナイとつながる

アルムナイネットワークに参加するのが理想ですが、ネットワークがない場合はアルムナイ同士でつながりを持っておきましょう。アルムナイ経由で古巣の会社の情報が入ってくるので、近況を把握しやすくなります。

(ただし、アルムナイで集まるときに「古巣の会社の悪口」は禁物。誰にもプラスになりません)

企業がアルムナイにすべきこと

在籍中】エンゲージメントを上げる

アルムナイとの関係性の構築は、在籍期間中から始まっています。どれだけアルムナイとつながりたいと考えても、そもそもアルムナイに「退職後も関係を持ち続けたい」と思ってもらえなければ、つながりを持つことは困難になってしまいます。

【退職時裏切り者扱いをしない

1社に一生勤める時代には、退職は悪とされ、退職者は裏切り者扱いされてしまうことも多くありました。時には退職者に対して、上司や同僚が感情的な態度を取ってしまうことも。

過去に行ったヒアリングでは、退職者からは「最後の1カ月は上司が冷たかった」という声が、上司・同僚からは「辞める人にどう接していいかわからない」「裏切られたと感じた」という声があがるなど、退職者と企業の双方とも、退職時にネガティブな経験をしていることが見えてきました。

このような状況では、たとえ退職者が会社に愛着を持っていても、辞めてしまった後ろめたさから連絡が取りにくくなってしまうことも少なくありません。上司も感情的になってしまった負い目から退職者に声をかけにくくなってしまい、結果的に双方とも仲良くしたい気持ちがあっても交流するのが難しくなってしまいます。

そうならないためにも、社員の退職時には相手の意思を尊重し、冷静に話し合うことが重要です。

>>「部下の退職」への「上司の反省」から送り出し方を考える

【退職後交流の機会をつくろう

個人間でご飯に行くといったことだけでなく、会社としてイベントを行うなど、アルムナイとの交流の機会を定期的に設けられると理想的です。

>>「アルムナイとのつながり方」に関する記事はこちら

なお、アルムナイネットワークがあれば、アルムナイとつながりを持ちやすく、イベントの声がけなどもスムーズです。

>>アルムナイ・リレーション特化型システム「official-alumni.com」

まとめ

雇用や働き方、キャリア形成が変わりつつある今、アルムナイへの関心は年々高まっています。「古巣の企業/退職者」とこの先どのような関係性を築いていくか、今のうちから考えていきましょう!