「退職」は終わりじゃない。勇気さえあれば、絆は再構築できる[後編]

2018年02月01日

PROFILE

クックパッド株式会社 ブランディング・広報 担当VP
小竹 貴子 

関西学院大学卒業。2004年有限会社コイン(後のクックパッド株式会社)入社。2006年編集部門長就任、2008年執行役就任。2010年、日経ウーマンオブザイヤー2011受賞。2012年、クックパッド株式会社を退社、独立。2016年4月、クックパッド株式会社ブランディング・広報担当本部長就任。またフードエディターとして個人でも活動を行っている。

アルムナビによるスペシャルインタビュー。アルバイトから執行役となり独立、2016年に出戻りされて話題となった小竹貴子さんへインタビュー。退職時の心境出戻りのきっかけと決意、そして、自身の経験からのアルムナイが出戻りする際のアドバイス、会社側のアルムナイ活用・受け入れノウハウまでお話いただきました。
後編は、企業がアルムナイ活用をしていくうえでの実践的ノウハウ満載の内容。多くのヒントが得られるはずです!


前編はこちら

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 人不足先進国の日本だからこそ、アルムナイ活用の新たなモデルになり得る

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――小竹さんがクックパッドに戻られた経緯は、「古巣に出戻りしたい」と考えているアルムナイにとって勇気づけられるものだと感じる一方で、「小竹さんだからこそできたこと」と、特別な例外だととらえられてしまうかもしれないとも思いました。

現状、出戻りや業務委託は、特別なキャリアを積んだ人、特殊なスキルがある人が目立っているのは事実だと思います。でも、そんな一部のことで終わらせるのは、企業/個人双方にとってもったいない話。誰にでもいろいろな選択肢がある、ということを知ってもらいたいですね。

それこそ、非正規と言われるパートタイマーでも、在籍期間の短い若い方でも、アルムナイになってからの新たな関係性が生まれて然るべきです。というのも、会社を支えているのは、こうした現場のメンバーなわけですから。

これからの日本は人が足りなくなるのはたしかなこと。どれだけ多様な働き方を受け入れ、労働力不足を解消しなければ、他国との競争に負けてしまうわけです。まあ、逆に考えれば、人不足先進国の日本だからこそできるチャレンジで、世界のモデルケースになっていけるんじゃないかって私はポジティブに考えています。

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 どんな企業でもアルムナイをはじめとした「薄いつながり」がキーとなる

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――「うちはアルムナイなんて関係ない。歴史が長く社員数も多い大企業だけの話でしょう?」とおっしゃる企業も多いのですが、決してそうではないし、たしかにチャンスを逃しているとも言えますね。

やはり「事業は人」なので、どんな企業であっても、人的リソースの獲得を既存の採用チャネルに限定せずに、アルムナイをはじめとした薄いつながりもチャネルとして持つことが大事になってくるはずです。それを積極的にやっていけば、個人からすればよりいっそう働きやすい社会になっていくし、企業からすればこれまでとは違ったイノベーションの源泉となっていきますから。

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――まさに「働き方改革」の目指すところですよね。さて、巷にはなかなかない、出戻りのノウハウとして伺いたいのですが、無事に古巣へ出戻りできたとして、そこでアルムナイが気をつけるべきことって何かありますか?

出戻り社員って、その古巣での過去の成功体験に固執してしまいがちなんです。私自身、「昔はこうやってうまくいった」と何度もポロッと出ちゃったことか(笑)。でも、辞めている間に企業は変わるんです。クックパッドの場合、卒業時点で100人規模が、出戻り時は400人でしたから、顕著だったというのもあるんですが。過去の成功体験にしがみつくと、美談しか覚えていないので、「今現在」の現場が見えなくなってしまいます。

ある日飲み会の場で、部下に「小竹さんまた『昔は……』って言ってますけど、時代は変わったんですよ」と指摘されたんです。すごいショックでしたが、いかに自分が過去を引きずっていたのかと気付かされました。

「信頼貯金」ゼロからやり直しているつもりはありましたが、「本当にリセットしなくちゃ」と、やり方自体をガラッと変えざるを得ませんでした。すごいしんどかったです(笑)。クックパッドの理念への理解以外は、築いてきたものを更地にするくらいの勢いでしたね。

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 出戻り活用の最大のメリットは、理念・ビジョン・ミッションマッチ

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――逆の立場で、クックパッドでは、どんなオンボーディングのサポートをされているのでしょうか?

第一に、まず入社する前に互いの現況をしっかり共有することが非常に大事です。会社そして、個人、それぞれ当時と現在のギャップを定量的に知ることで、入社後のミスマッチ、そして入社後に必要以上に過去に引きずられるリスクを減らせるはずです。通常の採用面接以上に互いの共有は必要な気もします。

第二に、その人の役割を、現況にあったかたちでしっかりとセットすることでしょうか。そういう意味では、「当時の部署で当時の仕事をしたい」と戻ってくるケースも多いのかもしれませんが、個人的な意見としては、私はあえて別の部署・仕事をやっていただくほうがうまくいくんじゃないかなと思っています。その経験やスキルを活かせる新たな仕事をセットするのです。

クックパッド内であった事例でいうと、当時サービス開発を手がけていた出戻り社員には、そのディレクション能力を活かして、新規事業に取り組んでもらったなんて成功例がありますし、私自身ももし卒業前と同じ広告事業に戻っていたら、より過去の成功体験にとらわれ、うまくいかなかったかもしれません。。

なんといっても出戻り社員を活用するメリットは、変わらないもの、つまり、理念やビジョン・ミッションが共有されていて、仕事に結びつけられること。その浸透が不要というのは、企業にとって手間がかからないのはもちろん、正しい方向への推進力となるのです。

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一度失敗しても、そこで終わりじゃない、いつでもやりなおせる会社が理想

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――それだけ「理念マッチ」「ビジョンマッチ」「ミッションマッチ」が重要ということですね。

はい、理念やビジョン、ミッションを確立し、それがみんなに浸透している企業は、「どういう世界を作りたいのか」がはっきりしている分、アウトプットが質量ともに変わってきます。

クックパッドは、日々の仕事すべてが「毎日の料理を楽しみにする」というミッションに基づく、ミッションドリブンの企業だと思っています。「儲かるか」よりもミッションに合致しているかが判断基準だからこそ、多くのお客様にご支持いただき、また、それに共感した社員が集まってきているわけです。

実は、このミッションを貫く覚悟ができたのも、色々な失敗をしながらここまできたからこそ。歴史をなかったことにするのではなく「いろいろあったけど、やっぱり『料理』なんだよね」と、戻ってきた原点でも言うのでしょうか。

完璧な人間がいないように、会社だって回り道や失敗をしますし、いつもまっすぐに進めるわけではありません。それは、そこで働く社員だって同じですよね。一度失敗したり、いったん会社を辞めたりしても、そこで終わりじゃないんです。失敗から何か大事なものに気付くことさえできれば、いつでもやりなおせるもののはず。

そういう会社がもっともっと増えていけばいいなと思っています。

前編はこちら

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クックパッド株式会社

クックパッド(https://cookpad.com)は、“毎日の料理を楽しみにする”というミッションのもと1998年3月に開始した、日本最大の料理レシピ投稿・検索サービスです。現在の投稿レシピ数は270万品を超え、国内では月間約6,000万人にご利用いただいています。

編集後記


アルムナビ編集長
勝又 啓太

_出戻りする立場からすると、「在籍時のスキル、やり方、考え方などが評価されたからこそ」という想いから、「前の部署のパフォーマンスが期待されている」と考えてしまうものです。でも、一方の企業側の立場からすると、「理念・ビジョン・ミッション」の共有のほうが重要で、他はいったんリセットするという選択肢もありなのかもしれません。変わらない「理念・ビジョン・ミッション」とは対象的に、企業のステージや時代の変化とともに、アルムナイが発揮すべき力も、パフォーマンスを最大化できる環境も異なって当然です。
_それを身をもって経験された小竹さんだからこそ、アルムナイの出戻りを受け入れる際には、(1)入社する前にお互いの現況をしっかり共有すること、(2)経験や現在のスキルを活かせる新たな役割をセットすることの重要性を提唱されているのだと感じました。
_本編では割愛しましたが、小竹さんは、自身がアルムナイである博報堂アイスタジオとも良い関係性を築いていて、クックパッドのコーポレートサイト構築を頼んだり、プロジェクトでご一緒したディレクターにクックパッドの広告事業部へジョインしてもらったりしたこともあるそうです。「一緒に働いた経験があるからこそ、得意なこと、不得意なことがわかる」とプロジェクトベースでの「信頼貯金」による人脈のエコシステムの有用性について語られており、会社単位のみならず、「プロジェクト単位のアルムナイ」の可能性も感じさせてくれる、つくづく充実したインタビューでした!