【社労士連載①】労務の視点から見たアルムナイの強み

2018年05月31日

社内でアルムナイ・リレーションを構築するうえでは、さまざまなアプローチがあります。そこでアルムナビでは、社会保険労務士の笠間啓介氏によるシリーズ寄稿にて、労務管理の観点から、アルムナイ・リレーション導入にあたっての法律上の注意点から具体的な運用まで、語っていただきます。第1回は、社会保険労務士から見た、アルムナイ・リレーション構築の労務管理上のメリットです。

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社労士から見た、アルムナイ・リレーション導入の労務管理上のメリット

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「アルムナイ」という概念を会社で取り入れるうえで、経営者は、「背中を押される」理由が欲しいもの。やはり、「一度会社を去った人間とは、ずっと、つながり続けなさい」という、法的な義務があるわけではありませんから。

なんとなく、「今思い浮かぶメリットだけでは弱い」という方のために、ここでは「社労士から見た、労務管理上のメリット」をまとめてみます。

実は「アルムナイ・リレーション」という概念を会社にも導入し、公式な制度(以後、「アルムナイ制度」)とすることで、労務管理の側面でも意外な効果も期待ができるんです。

たとえば、退職をめぐる労務のトラブルにこんなことがよくあります。

  • 「辞めた社員が引き継ぎもしないで有給消化を主張してきた」
  • 「会社の決まりでは1か月以上前に退職の申出をしなければいけないのに、14日後には退職させてくれと言ってきた」
  • 「辞めた社員が、現職の社員を引き抜こうとしている」

 

こうしたトラブルは、その根底に「会社は辞めてしまえばもうそれで終わり」という発想があり、これは言ってしまえば常識のようになっています。

そして、だからこそ、上記のトラブルに会社はほとんどなす術がなかったとも言えます。

実際、上記退職希望者の主張は、上2つは法的に基づいた主張(民法第627条1項 労働基準法第39条)ですし、3つ目もそれで会社が下手に訴えてもよほどでない限り勝つことはありません。

しかし、アルムナイ・リレーションを制度として導入するとどうなるか。
単純な話ですが、「辞めれば終わり」という概念が根底からひっくり返ります

たとえば、アルムナイ・リレーション構築の一環で「会社が経済的に支援するOB・OG会」「会社製品(サービス)の優待」「ビジネス機会・情報の提供」などのメリットをつくりだし、これらを享受するためには最後まで会社のルールを遵守し、職務を全うすることを前提とした場合を考えます。

そうすると上記のような問題を起こした社員と、最後まで職務を全うしてくれた社員との間に「差」をつけることも可能となるのです。

さらには、退職後も、退職者間で別のビジネスなどのやりとりをする際は、必ずその会社での現役時代にどこまで責任をもって仕事をしていたかはいい意味でも悪い意味でも響き続けます

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アルムナイ・リレーションが就業規則をはじめとしたルールの効果を強化する

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この仕組みをもっと応用しておけば、会社が明確に設けている、たとえば、就業規則や様々な約束事や要請の効果をさらに強化してくれることも期待が持てることができるようになります。

なんせ、アルムナイ・リレーション構築は法律上は必要性がないもの、逆に言えばそれだけ自由に労務とのつながりを創作できるわけですから。

アルムナイ・リレーション構築は、一見すると退職者との関係性をつくりだすという、一見やらなくてもいい無関係なことに見えるかもしれませんが、実はそこを作り出すことで会社のルールをもっと有効に働かせることにもつながるのです。

寄稿


社会保険労務士
笠間 啓介

1987年4月生まれ 一橋大学卒業。在学時代に社会保険労務士の資格に出会い試験合格、卒業後、都内の社会保険労務士事務所に就職。在職中は社員が1人の起業から800人規模までのクライアントを受け持つ。2016年4月に独立しSHR社会保険労務士事務所を開業。現在は80社余の企業と顧問から人事制度の構築など幅広く携わる。