【社労士連載②】「働き方改革」と「アルムナイ」

2018年06月20日

アルムナイと聞くと、「退職者の前に既存社員のことを考えろ」と考える方や、「いざ始めようと思ってもそうやって言われるんじゃないか」と、心配してしまう人事の方も多いのではないでしょうか?連載第二回の今回は、アルムナイ・リレーションが、既存社員の働き方改革とも密接に関係するということについて社会保険労務士の視点から語ってもらいます。

_

「アルムナイ・リレーション」を「働き方改革」と同じくらい身近なものに

_

「働き方改革」という言葉は、すっかり私たちにとってなじみ深いものとなりましたね。働き方改革「法案」にもなっているくらいですから、今の「労務」の実務分野の中でも中心的な言葉となっているのは間違いないでしょう(少なくとも今年いっぱいは!)

そんな背景もあって、「働き方改革」と言えば、「こんなものでしょ!」とイメージがつきやすいかもしれません。

一方で「アルムナイ・リレーション」については、まだ「言葉としては知っているが、よくわからない」という方が多いのではないでしょうか。

ただ、目的としては「働き方改革」も「アルムナイ・リレーション」も実は近いんです!なので、今回の記事のねらいとしては、「『アルムナイ・リレーション』を『働き方改革』と同じくらい身近なものに!」となります。

おさらいになりますが、そもそも「働き方改革」っていうのはどんなもの(こと)でしょうか?

「働き方改革」とは、(国家戦略的には格差の是正や景気拡大なども含まれますが)労務の面に限ってざっくり言うと、人手不足や働く側の働き方へのニーズの多様化によって、残業や長時間労働対策を行い、フレックスや短時間正社員など多様な働き方を整え、またリフレッシュ休暇など休み方を整え、総じて働きやすい会社を目指していくという取り組みです。

_

具体的には、

  • 短時間正社員やフレックスなどの制度を就業規則や労使協定で整える
  • リフレッシュ休暇など休暇制度を整える
  • テレワークや在宅勤務を導入する
  • 有給休暇の取得率の向上や残業の削減に取り組む
  • 管理職や経営者層への意識付けを行う

_

といったことが挙げられるでしょう。

これに対して「アルムナイ・リレーション」構築は、労務の側面から見るとどんなことでしょうか。就業規則うんぬんの前に、前提を確認しておきます。

「アルムナイ」という概念を持ち込むことイコール、会社側から「たとえ社員が辞めたとしても会社はあなた(社員)と良い関係を持ち続け、互いに協力し合える関係でいるよ」という意思表示をすること。これによって「辞める」ことへのマイナスな壁を取り払い、結果的に、今在籍している社員にとっても働きやすい、キャリアを考えやすい環境を創っていくことにつながります。決して退職を促したり、辞めやすくしたり、という意図ではなく、「残るか辞めるか=All or Nothing」という考え方を変える、ということなのです。

つまり、アルムナイにとっても、今働いている社員にとっても「満足して働きやすくする」というゴールを持つという点においては「働き方改革」も「アルムナイ(への取り組み)」も共通している、と言うことができます。

_

アルムナイ・リレーションは会社と社員の関係性を「今」から「未来」にまで拡張する

_

では何が違うかというと、「アルムナイ・リレーション」は、働き方という「今」ではなく、辞めた後という「未来」をも創作することによって、社員とのキャリアビジョンについての会話の領域を広げたり、採用や育成をさらに計画的にすることができたり、そして何より、社員との関係性そのものを変えるという点において魅力的な会社を作るところまで、拡張されたものといったところでしょうか。

そして、「働き方改革」でも制度や手続きを整え、さらには管理者層や社員の意識付けを行っていくなど、いろいろな整備が必要なように、「アルムナイ・リレーション」においても、以下のようなことが必要になってくるでしょう。

  • 退職時のスキームや手続きの確立する
  • 再雇用など退職後の具体的な協力関係を制度化する
  • アルムナイ・リレーションを健全に保つための規則を整備する
  • 管理職や経営層への「退職する」ことへの新たな意識付けをする
  • 社員に対する退職後も含めた関係性作りについての啓蒙を行う

_

また、そのための実務として社内の施策の準備や整備が必要になってきます。

  1. 就業規則に準拠する形での新しい規則を制定する(「アルムナイ規程)など)
  2. アルムナイ・リレーションについての社内広報で周知する(社内パンフレットの作成)
  3. 退職時点で退職者と退職後のアルムナイの「合意書」を交わす

_

「退職者と関係性をもち続ける」こと自体にももちろん「アルムナイ・リレーション」の価値はあります。しかし、それだけでなく「今」の労務に「アルムナイ・リレーション」を通じて、「未来」まで拡張した「働き方」を持ち込むことで、より会社の「今」が魅力的になっていくはずです。

寄稿


社会保険労務士
笠間 啓介

1987年4月生まれ 一橋大学卒業。在学時代に社会保険労務士の資格に出会い試験合格、卒業後、都内の社会保険労務士事務所に就職。在職中は社員が1人の起業から800人規模までのクライアントを受け持つ。2016年4月に独立しSHR社会保険労務士事務所を開業。現在は80社余の企業と顧問から人事制度の構築など幅広く携わる。