会社とアルムナイが自然なかたちで絆を紡げるのが理想

2017年07月20日

PROFILE

クービック株式会社 代表取締役社長
倉岡 寛 

東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻を2007年3月に卒業後、同年4月にグーグル株式会社に入社。検索担当プロダクトマネージャーとして、日本の検索シェアに責任を負う。2011年4月にグリー株式会社に入社し、米国の GREE International Inc の立ち上げや、Platform 事業の企画責任者、新規案件プロジェクトの事業部長を歴任。2013年10月にクービック株式会社の立ち上げに参画。代表取締役社長に就任。

アルムナビによるスペシャルインタビュー。第一回は、グーグルとグリーの2社のアルムナイである倉岡寛さんに、自身のアルムナイ・ネットワーク活用と、自社での取り組みについて伺いました。

 グーグルを卒業してすぐ起業していたら、きっととっくに倒れていただろうな

――倉岡さんが卒業された2社、グーグルとグリーのアルムナイネットワークについて、それぞれお聞かせください

グーグルグリーも、かたちこそ違えど、ともにアルムナイ同士のネットワークは活発。私も公私ともに仲良くさせていただいている方々が多いです。ビジネスって、「つまるところ、人」じゃないですか。何かふと困った時に、そのつながりの延長で、気軽に相談できるのは心強いこと。

特にグーグルのアルムナイ同士だと、グーグルには「Googley(グーグルっぽい)」という言葉があるんですけど、それくらい仕事観が共有されていて、誰に何を頼んでも期待以上の成果が返ってくるという信頼感があるんですね。それは、たとえ在職中、一緒に仕事をともにしたことがない人でも安心なほど!

一方、グリーのアルムナイネットワークは、グーグルとは企業カルチャーが全然違う分、異なる知見が得られるつながりだと言えます。たとえば、「エンジニアであってもKPI重視」の徹底ぶりに見られる考え方に顕著で、私自身、グリー入社以来「これはビジネスとして筋がいいのか?」と常に自問自答し続ける癖がつき、かなり視野が広がったほど影響を受け続けていますし、今もちょこちょこ集まってはそんなビジネストークをしていますね。

さらに在籍当時を思い返せば、立場上、田中良和さんやグローバルトップだった青柳直樹さんの経営を間近で学ぶことができたのも大きな糧であったわけで、「グーグルを卒業してすぐ起業していたら、きっととっくに倒れていただろうな」と思うばかり。というのも、私の場合だけかもしれませんが、グーグル流ユーザーファーストだけではどうもうまく立ち行かないとき、グリーで学んだビジネス感覚とのバランスによってなんとか切り抜けられた、という場面がいっぱい思い浮かぶので!

このように、どちらの会社にも、等しく最大級の感謝とリスペクトを抱いているんです。キャラに合わないかもしれませんが、平たく言えば、愛社精神です(笑)。ですから、事務的に言うところの「退職者」というよりは「卒業生」という感覚はとてもしっくりきます。

「いつか恩返しをしなくちゃ」と思いつつ、何もできていないばかりか、「グーグル・アルムナイ」「グリー・アルムナイ」として、何度かメディアに取り上げていただいている分、「その名に恥じない人間にならないと」と襟を正しています。

先日、グーグルでの中小企業向けビジネスの担当者の方からランチに招かれて、カジュアルにヒアリングを受けたんですけど、実際にお役に立てたかはともかく、そんな小さなことから積み重ねるのはもちろん、「つきつめれば、このクービック株式会社の事業を大成功させることが、私にできる最大の恩返し」と自分に言い聞かせ、日々邁進しています。

 

退職が会社と社員の絆の切れ目になってしまうのはお互いにとってもったいない

――逆に、倉岡さんが現在経営されている、クービック株式会社ではどのようにアルムナイを活用しようとお考えでしょうか

ここまでアルムナイという立場からいろいろ語ってきたので、「それではクービックでは、アルムナイとどうつながっているの?」という話になると思いますが、実は創業以来そこまでの人数が辞めてはおらず、まだその段階に至っていないというのが正直なところです。

ただ、その数少ないアルムナイも、ありがたいことに、つい先日も会社にふらっと遊びに来て差し入れのお菓子を持ってきてくれるなど、相互につながっている、そんな関係に安心感を覚えます。私は、「企業というものは経営者の器以上にはならない」と思っていますし、たとえ今後人が辞めても自己反省こそすれ、恨むなんてとんでもない話ですから。

他に「クービックならでは」と言えば、これまでインターンシップ経験者が10数名いて、彼らの教育係の取締役を中心にネットワークが形成されていて、私も年に一度ほど呼ばれて参加しています。

インターン生も社員と同様に、限られた時間ではありますが、人生における一日の半分以上を占める「はたらく」の選択肢として、このクービックという場で自己投資してくれたわけですから、卒業後それぞれの道を歩んだ今も、仲間意識を抱かずにはいられません。これからも会社として、ゆるくつながっていきたいと思っています。

思えば、時間の経過とともに、自然とグーグル・グリーともに在職者の知り合いがどんどん少なくなっていって、会社とのつながりが薄れていっている感覚があるんです。そんな中、アルムナイ同士での集まりで、私自身はつながりを再確認しているかたちですし、この「同窓会的つながりを、もっと」というニーズはけっこうあると思っています。

特にグリーでは、有志が旗振り役となって、数百人規模のかなり大きな会も形成されており、私もいつか参加してみたいと思っています。非公式ならではの気軽さが活性化につながっている面もあるのでしょうが、有志の方々を持続的にサポートするしくみや、会社公式でもゆるくつながりが保てるしくみがあればなお良いなと感じています。

そもそも会社が「社内にもういない」とか「退職をした」というだけで、完全に絆を手放しちゃうのはお互いにとってもったいない話なんだなと改めて思います。もしかしたら会社・アルムナイ間に多少の愛憎があるケースもあるのかもしれませんが、過去があるから今があるわけじゃないですか。特に伝統的な日本企業は「家族」的な経営を標榜してきたわけですから、いつでも安心して立ち寄れるような「実家」的存在になるのもひとつの手かもしれませんし(笑)。いずれにしても、会社とアルムナイが自然なかたちで絆を紡げるのが理想。もちろん、クービックはそんな会社であり続けたいと思います。

編集後記


アルムナビ編集長
勝又 啓太

倉岡さんの一見クールなイメージと異なり、グーグルにもグリーにも、自社のアルムナイ(インターン含む)に対しても、ウェットで暖かいものを感じました。アルムナイとして感じている古巣への感謝や愛着のようなものが、ペイフォワード的に、自身の経営者としての社員やアルムナイに対する向き合い方に顕れているのでしょう。こういったペイフォワードの精神が、よりいっそう社会に広がっていくことで、「働き方」はどんどん変わっていくはずです!