「辞めるなんて何考えてるんだ?」退職面談で裏切り者扱いされた退職経験者が、それでも元上司とまた会いたい理由【アルムナイ覆面座談会・後編】

2019年08月27日

「ぶっちゃけ辞めた会社とつながるってどうなの?」を探る本企画。
後編では、「辞めた会社とのつながりで困ったこと、辞めた時の心境、元上司への本音」を赤裸々に語ってもらいました。どうやら、時間が経った今だからこそ言える複雑な気持ちや葛藤があったそうで……。

>>前編はこちら:「辞めた会社と付き合う」ってぶっちゃけどうなの? 退職経験者が実感しているメリットを聞いてみた【アルムナイ覆面座談会・前編】

PROFILE

太田さん(仮名)
2007年に大手電機メーカーへ新卒入社。2013年に退職し、現在は大手IT企業で人事として働く。

松野さん(仮名)
2012年4月に大手IT企業のグループ会社へ新卒入社。2018年に退職し、現在は大手人材企業の新規事業部署で働く。

水川さん(仮名)
2009年に人材系企業へ新卒入社。2015年に退職し、現在はフリーランスとして企画や編集、ライティングなどを行う。

退職した後、充実している姿を見せなければいけないというプレッシャー


— これまで古巣と繋がるメリットを聞いてきましたが、逆にデメリットや困ることはありますか?

松野:「元気にやっているよ!転職して、とても充実しているよ!」という姿を見せなければいけないというプレッシャーは正直あります。背中を押して送り出してくれた方々に対して、そういった姿勢を見せることが恩返しの1つだと考えていて。ただ、転職した時って最初の半年が一番つらいじゃないですか(笑)。なかなか上手くいっていないのに、強がっていた時もありました。

太田:
すごく分かります……!私の古巣は終身雇用が前提の会社だったので、口には出さなくとも「辞めたら裏切り者」という空気がありました。それでも自分は意思を貫いて辞めたので、その意思を証明しなきゃというプレッシャーはありますね。前の会社の同期よりも大きい仕事をしたいし、昇進だって早くしたい。だから「正直キツイな」って時期に会って話すときは、少し強がっているところはあるかもしれないです。

水川:私の場合はがっつり一緒に仕事をしているのでそういうプレッシャーはないですが、どこまで踏み込んでいいんだろう?って思うことはあります。後輩のマネジメントをやっているとはいっても、私は評価に関わるわけではないし、私自身に業務上の明確な目標があるわけでもない。

例えばウェブサイトが目標に掲げているPVに到達しなかったからといって、私に責任はないんですよね。もちろん責任持って、編集部の一員として仕事をしていますけど、あくまでも私は外部の人。その辺りの立ち位置は難しいなと時々感じます。


会わせる顔がない……。転職という選択をしたアルムナイが感じている後ろめたさ 


— いざとなったら、古巣に戻るという選択肢はありますか?

太田:うーん……。「戻ってこいよ」と言ってくれる方はいますが、難しいと思います。僕の場合は、海外に研修で行かせてもらって、昇格もさせてもらった後に辞めたんです。喧嘩別れでは決してありませんが、気軽に出戻りできる関係ではない。同僚とは今も仲良くしていますが、当時の上司に対しては僕も「裏切ってしまった」という気持ちがあり、会わせる顔がないです。

— やっぱり「辞める」ことへの考え方って、前職の大手電機メーカーと現職のIT企業だと異なりますか?

太田:全然違いますね。古巣の大手電機メーカーでは、新卒を沢山採用してそのままずっと働くのがスタンダードで、中途採用もほとんどなかったです。一方で、現職のIT企業は新卒採用もしていますが、中途の社員が多いんです。辞めるのも当たり前という文化があると感じます。

松野:分かります(笑)。私の前職も「昭和の管理職」という感じの人が役員にいて、まさに「辞めた人は裏切り者」という考え方でした。

水川:そうなっちゃうと、どんなに辞めた側が歩み寄ろうと思っても難しいですよね。
私の前職も、基本的には「辞めるなんて許せない」というスタンスなんです。私はたまたま上司や役員から気に入られていたこともあって今も仲良くできているんですけど、周りの退職者は圧倒的に喧嘩別れになってしまっていることが多かったです。

— 古巣の気まずくなってしまった上司と、改めて会ってみたいと思いますか?


松野:私は辞める時に上司を怒らせてしまっているので、その上司とは今も気まずい関係です。
「これがやりたい!」という意思を持って辞めているからこそ、当時の上司から言われた「こんなに良い会社他にないぞ」「なんでお前はやめようとしてるんだ!」「頭おかしくなったんじゃないか」といった否定的な言葉によって、裏切り者扱いをされたという印象が正直少しあります。

人一倍可愛がってもらったし、育ててもらっただけに、上司もまさか私が辞めるだなんて思っていなかったと思うし、最後まで納得がいってなかったと思うんです。私が今連絡をしたとして、嫌な顔はされないと思うんですけど、私の中で後ろめたさがあります。

ただ、時間が経つにつれて上司への気まずさは薄れてきているのも事実です。というのも、新天地で仕事をしていて分かったのですが、当時の上司は、私の感情や思考の癖もわかったうえで、親身になって話してくれてたんだなと。愛を持って接してくれたんだろうなあと分かり始めてきました。きっかけと勇気があれば、またお会いしたいとは思いますね。

今も古巣とつながれているのは「辞め方」と「在職時の仕事への向き合い方」 が誠実だったから


先日アルムナビで行ったアンケートで、辞めた後もつながるためには「辞め方が大事」という結果がでたんです。辞め方が悪いことで関係も悪くなってしまうようで……。
もちろんそれは会社側の送り出し方の問題もあるんですが、皆さんの辞め方はどうでしたか?

松野:そうですね、会社は、なんだかんだ言いつつもしっかり送り出してくれました。
私個人としても、最後までめっちゃ仕事したんですよ。ここまではやりきるって決めて、上司とも約束をして、最終日の夕方まで仕事をして周囲が認めてくれるだけのアウトプットを出した。そこは一つ、嫌な辞め方をしなかったというポイントではあると思います。

太田:僕もそれなりに円満だったと思います。
というのも、引き継ぎをしっかりするために退職する時期を1ヶ月後ろにずらしたんです。会社のことをちゃんと考えているというのは伝わったと思いますし、だからこそ裏切った感はそこまで強く出なかったはずです。

水川:私も円満退職だったんです。辞めるっていう話をしたのが7月頭で、実際に辞めたのが12月末。半年くらいあって、かなり前からちゃんと伝えられていました。ただ、今みたいに仕事をもらえる関係になれたのは、辞め方以上に在籍中にしっかり仕事をして実績を出していたことの方が大きいとは思います。


—  最後になりますが、古巣と良好な関係を築くためのポイントは何だと思いますか? 

松野:誠実さ、でしょうか。私は上司と気まずい関係になってしまったのですが、これは仕方のない部分もあるかなと思っていて。ありがたいことに評価をしてもらっていたので、会社が「あれだけ賞やインセンティブをあげたのになんで辞めるんだ」という感情になるのも理解できるんです。自分一人の力でその実績を出せたわけではないし、見送る会社側としては「自分だけの力じゃないことで得た実績を武器に、転職しやがった」みたいになりかねない。だからこそ、引き継ぎをちゃんとするとか、誠実に辞めることは、重要だと思います。

 水川:ですね。辞める側が誠実でいるのはもちろんですが、上司や人事が誠実に対応することも同じくらい重要だと思います。私は気まずくはならなかったですけど、同僚の中には「そんな会社に転職するなんて意味わかんない」くらい、上司からボロクソに言われた子もいて。その同僚の元上司への印象は今はまだ悪いままですし、すぐに仲直りするのは無理だと思うんですけど、2〜3年後、もし上司側から歩み寄って「あのときはごめんね」っていう言葉があれば、また関係性は回復できるんじゃないかな。

 太田:そうですね。自分は、人事として退職面談をみていますが、そういうケースって、優秀な人が辞める時は特に多いです。今まで良い人だった上司でも、部下が辞めるって伝えた瞬間に「なんだあいつ!」って感情的になってしまう。
でも、ちょっと時間をおけばお互いに冷静になれると思うんですよ。退職したことで気まずくなってしまった時は、「時間を置く」というのが関係性を再びプラスにするための重要なポイントではないでしょうか。 


 

取材・構成/天野夏海
文・撮影/築山芙弓

 

私たちの想いは、辞め方改革という言葉を通じて
退職で終わらない企業と個人の新しい関係を実現することです。