退職者が採用の協力者に? リフカム代表の話から探る、「リファラル採用」と「アルムナイとの関係構築」に共通するポイント

2019年09月18日

PROFILE

株式会社リフカム 代表取締役
清水 巧 

Sansan株式会社にて、個人向け名刺アプリ「Eight」、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」の立ち上げに従事した後、株式会社リフカムを設立。累計5億円の資金調達を実施。850社以上のリファラル採用の立ち上げを支援。2018年にはForbesの「アジアを代表する30歳未満の30人」で、 エンタープライズ・テクノロジー部門に選出。

最近注目を集めるリファラル採用。社員からの紹介であるため企業文化にマッチする人材が獲得でき、採用コストも抑えられる手法として、取り組む会社が増えています。

ただ、リファラル採用には、社員が「自社を紹介したい」と思っているかどうかが重要です。そのためには会社への信頼や愛着が不可欠ですが、同じことは企業とアルムナイ(退職者)の関係構築にも言えます。もしかして、リファラル採用とアルムナイには共通点があるのでは……? 

そう思ったアルムナビ編集部は、リファラル採用を活性化するクラウドサービス「Refcome」を運営する株式会社リフカムの代表・清水巧さんを訪ねました。

 

エンゲージメントが高ければ、退職者もリファラル採用に貢献してくれる

 

— 清水さんは、どうしてリファラル採用支援を事業として始められたのでしょうか?

起業をした当初はリファラル採用支援ではなく、創業メンバーの仲間集めができるサービスを事業としていました。僕自身が創業メンバー集めに困った経験から始めたもので、ありがたいことに多くのスタートアップ企業の経営者の方にご利用いただいたのですが、マネタイズが難しく、1期目でキャッシュアウトを経験しています。

リファラル採用を事業として始めたきっかけは、キャッシュアウトから事業をピボットするまでの間に企画していた、ベンチャー企業と転職候補者をマッチングする採用イベントです。一般的には、採用イベントって人事担当の方がブースに立つじゃないですか。でも、1社だけ社員皆で参加して、声をかけ、良い人がいれば皆で口説いている会社があったんです。

それが当時まだ数十名規模だったメルカリさんなのですが、その様子を見た時に、「やり方さえ工夫すれば、どんな会社も社員全員で採用に取り組むことができるんじゃないか」と思いました。その経験が、リファラル採用支援を事業として始める原点になっています。リファラル採用はまさに「社員全員で行う採用手法」ですから。

 

— リファラル採用が上手くいく企業、上手くいかない企業の違いは何なのでしょうか?

一言で言うと、会社へのエンゲージメント(社員の組織への愛着心や、貢献に対する意識を測る指数)の高さです。

実は、リファラル採用は事業開発と近いんです。例えば、事業を創る中でカスタマーサクセスが成功していると、お客さんがお客さんを呼んできてくれるサイクルを創ることができます。リファラル採用も同じで、社員の会社へのエンゲージメントが高ければ高いほど、社員が社員を呼ぶ状態を創ることができるんです。

でも、会社の規模が大きくなると人事部ができて、社員にとって採用が自分ごとではなくなっていく。そうすると知らない人がどんどん組織に入ってくるようになり、「自分の声だけじゃ会社を変えられない」とか「社長との距離が遠い」といった不満があがり、エンゲージメントが下がってしまうことはよくあります。

また、会社の規模が大きくなったとしても、「採用はみんなでやるもの」というカルチャーのある会社は、リファラル採用が上手くいきやすいです。どうしても「採用は人事の仕事」と役割をきっちり分けてしまいがちですが、良い意味で役割分担をしすぎないカルチャーを創ることも大切です。

 

— 「エンゲージメントの高い社員ほど、リファラル採用に協力的な傾向がある」ということですね。エンゲージメントが高い状態で辞めた社員からのリファラル採用というのもあるのでしょうか?

はい。その会社での体験に対して満足度の高い状態にあるアルムナイ(退職者)が、実際にリファラル採用に貢献するケースは多々あります。例えば、「成長したい」「良い仲間と働きたい」「特定のスキルを身につけたい」など、その会社で得たかったものを得られたアルムナイほど、同じものを求めている人に古巣を紹介してくれる傾向があります。

一方で、「生涯勤めるつもりで入社したものの、結果として退職をした」といったケースで、アルムナイがリファラル採用に協力してくれることはあまりないです。

 

会社と個人は主従関係ではない。事業提携と同じで、Win – Winな状態が必要。

 


— リファラル採用を行う上でエンゲージメントが重要であるのと同様に、企業とアルムナイが良い関係を築くためにも、アルムナイの在籍時のエンゲージメントが重要です。つまりエンゲージメントを高めることが双方の取り組みのベースになると思うのですが、清水さんが気をつけていることはありますか?

社員との関わり方に関しては、リード・ホフマンの「ALLIANCE」という本を参考にしています。会社と個人の関係はフラットであり、主従関係じゃないんですよね。会社のミッションと、社員が個人として実現したいことの双方の重なり合いがあるからこそ、一緒にやっている。会社と個人の関係も事業提携と同じで、Win-Winである必要があるんです。

 

— 逆に、Win-Winではない関係とはどのような状態でしょうか?

企業がWinで個人がLossの場合は、ミッションがすれ違っている状態です。

どんなに優秀な人でも、会社と目指したい方向が異なる状態で無理やり頑張ったところで、最大限のパフォーマンスは出せません。なので、「優秀だから辞めてほしくない」と無理に会社に留まらせるより、卒業してもらった方が、長期的に見るとお互いにとって良いと考えています。

逆に、個人がWinで企業がLossの場合は、給与に対してパフォーマンスが追いついていない能力不足のケースです。個人としても「仕事で貢献できていない」という後ろめたさから気持ちが落ち込んでいくので、本質的にはWinとは言えないですし、早めに面談の場を設けるなどの対応をするようにしています。

 

— リフカムではミッションに「採用を仲間集めに」を掲げています。「仲間」として入社した社員が辞めることについては、どのように捉えていますか?

まず僕の考える「仲間」の定義は、同じミッションの元に集まる人たちのこと。会社に一生の忠誠を誓う必要はないと思っています。前職のSansanの寺田社長も、「Sansanはミッションを追う会社であり、ミッションを実現できないのであれば解散してもいい」ということを言っていたんですよね。社員も皆それを当然のことだと考えていて、僕はそんな会社を素直にかっこいいと思いました。

だから僕も、リフカムをそんな会社にしたいんです。入社した時は事業と個人のミッションが合致していたとしても、時間が経って変わることはある。社員に対して「本当は違うことをやりたいんじゃないの?」なんて言いたくないし、できれば辞めてほしくないですけど、仲間を自社に縛りつけるようなことはしたくないと思っています。

どんなケースにせよ、本音で話し合った結果、お互いのギャップが埋められないと双方が納得できれば、卒業という選択をとることがWin-Winだと思っています。

 

— 過去にアルムナビが実施したアンケートで、辞め方が退職後の関係に大きな影響を及ぼしていること、そして退職の意思を尊重されなかったことを多くの退職者が不快に感じていることがわかりました。「話し合いを重ね、お互いが納得した上で退職という結論が出たのであれば、その意思を尊重することがWin-Winになる」という視点は、アルムナイと良い関係性を継続させるためにも重要なことだと思います。

 

卒業していったアルムナイも含めて、リフカムという会社を強くしていきたい。

 


— アルムナイと良好な関係にあることは、会社にとってどのようなメリットがあると思いますか?

いろいろありますが、一つは回り回ってまた一緒に仕事ができる可能性があることです。情報交換ができるかもしれないし、サービスの顧客になってくれるかもしれないし、もしかしたら他社でスキルをつけてもう一度リフカムに戻ってきてくれるかもしれない。どんな形であれ、アルムナイと仕事で関わることができるのは嬉しいことです。

また、良い口コミを広めてくれるという良さもあります。実際にリフカムのアルムナイは、僕の知らないところで、会社やサービスをおすすめしてくれているんです。特に「自分はリフカムに入ってこんな経験をして、こんな成長ができた」という話ができるのは、アルムナイだからこそ。

実は以前、自社の採用を目的としたミートアップイベントに、起業のために退職をしたアルムナイがふらっと参加してくれたことがあったんです。採用候補者の方にとっても、リフカムを卒業した後に活躍しているアルムナイがいることで、よりリフカムでどのように成長できるのかがイメージできたのではないかと思います。

 

— アルムナイと交流があることが、結果的に採用活動にもプラスになっているんですね。今後はアルムナイとどのような関係性を築いていきたいですか?

“Paypalマフィア”のように、“リフカムマフィア”を創っていきたいです。たとえ共に働いた期間が1〜2年という短いスパンであったとしても、同じミッションにフルフォーカスして取り組んだ仲間であるアルムナイとは、退職後も良い関係でつながり続けたいですね。

もしかしたら卒業していったアルムナイの中から、リフカムよりもすごい会社を創るメンバーが出てくるかもしれませんし、そういった活躍しているアルムナイの存在は、現社員のモチベーションにもなるように感じています。アルムナイも含めて、リフカムという組織を強くしていきたいですね。

 

— いつからそのような考えを持つようになったのでしょう?

僕の古巣であるSansan株式会社の影響が大きいです。社長の寺田さんも「“Sansanマフィア”を創りたい」と言っていましたし、僕もその考えに共感しています。

Sansanという会社は、僕にとって頼ったら力になってくれる心強い存在です。僕はSansanに新卒で入社して7ヶ月で辞めているので、退職時は厳しい言葉もたくさんいただいたのですが、それでも「やりきって、また報告をしに来い」と背中を押し、厳しさの中に愛を持って送り出していただいたことを今でもとても感謝しています。

会社にとって、「社員以外の自社のファンをどれだけ増やせるか」はとても重要です。だからこそ、アルムナイとも信頼関係を持ち続けられると良いですよね。辞めたからといって、関係が終わるわけじゃないですから。

 

取材・文/築山 芙弓
編集/天野夏海
撮影/根岸 泰宏

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仲間の定義や社員との関係性、リフカムマフィアを創りたいという想いなど、Sansanで触れた考え方がリフカムの経営にも多く活きていることが伝わるインタビューでした。

後編では、清水さんと清水さんの元上司にインタビュー。

当時から約6年が経った今だから話せる退職面談のエピソードや、今も円満な関係性を築けている理由、会社とアルムナイ(退職者)が良い関係を構築することのメリットなど、赤裸々にお話いただきました。
>>後編はこちらから

編集後記


アルムナビ編集部
築山 芙弓

“仲間とは、一生の忠誠を誓う人のことではなく、同じミッションの元に集まる人たちのこと”
そんなカルチャーだからこそ、リフカムの卒業生が、会社の良い口コミを広めてくれたり、会社の採用を目的としたミートアップイベントにふらっと顔を出してくれたり、退職後も良好な関係を築くことができているのですね。

清水さんがお話しされた「同じミッションを持つ仲間同士が、退職後もつながる価値」が社会に広まることで、企業と個人の関係そのものへの考え方が変わっていくはずです!