即戦力人材を狙う人事が「カムバック採用」に目を向けるべき理由

コロナ禍で有効求人倍率は下降傾向にあり、積極的に採用をしていきたい企業にとってはチャンスとも言える状況です。ただ、景気の冷え込みが続くことが予想される今、経験者かつ、優秀な人材に絞って採用活動を行う企業も増えています。

そんな中、人事担当者の方にオススメしたい新しい採用チャネルが「カムバック採用」です。

なぜカムバック採用に注目すべきなのか

カムバック採用とは、過去に自社を退職した元従業員を再度雇用する採用手法です。再雇用やジョブリターン採用とも言われます。

では、なぜ優秀な人材を採用するのにカムバック採用が適しているのでしょうか? 理由は大きく4つあります。

1. 即戦力人材が採用できる

カムバック採用の対象は、元従業員。自社の社風やサービス、仕事の進め方などを理解しているため、通常の中途入社者に比べて教育コストがかかりません。

2. ミスマッチが発生しない 

再入社した人は、会社の良いところも悪いところも踏まえた上で「戻る」という意思決定をします。そのため期待値のズレが生じにくいです。

3. 採用フィーがかからない

基本的に企業への直接応募となるため、通常の中途採用で必要な広告費やエージェントへの成果報酬が発生しません。

4. 採用ブランディングにつながる 

再雇用実績や、再入社した人の声を発信することで、「一度退職した人が戻りたくなるような会社」というブランディングにつながります。

>>「うまくいくカムバック制度の事例とポイント」を見る

カムバック採用に対する、人事担当者の勘違い

メリットの多いカムバック採用ですが、人事担当者の方からは「そう上手くはいかないのでは?」という声も耳にします。ただ、そう思う理由を紐解いていくと、間違ったイメージが起点になっていることも多くあります。

勘違い1. 「戻ってきたい人」なんていないのでは?

「会社のことは好きだけど、この先のキャリアを考えて退職する」人が増えています。つまり「退職者=自社が嫌いな人」とは限りません。むしろ会社の外に出たことで、過去に在籍していた企業の良さに気付くケースは多いもの。

また、希望と合わなくなったから退職をしたものの、その後本人の環境や考え方が変わったことで、再度古巣企業で働きたいと思うこともあります。

  • 「20代のうちは仕事に時間を割いて成長したい」と転職をした人が、30代になって結婚したことで「ワークライフバランスを重視したい」と、古巣企業に目を向ける
  • 働き方改革に取り組んだことを知った退職者が「今なら働きたい」と思ってくれる
  • 起業のため退職したが、コロナ禍でうまくいかずに断念し、古巣企業への出戻りを検討する

このような例は珍しいことではありません。実際にアルムナイ特化型クラウドシステム「Official-Alumni.com」導入企業の9割で、元従業員の再雇用が起きています。

勘違い2. 「優秀な退職者」がいない

「辞めた人に優秀な人がいない」と話す人事担当者は少なくありません。その背景には、「ダメな人だから退職をする」というイメージがあるのだと思います。

たしかに終身雇用が当たり前だったころは、出世レースに敗れた人や、会社内に居場所がない人が辞めていき、仕事ができる人は長く会社にいるケースも珍しくありませんでした。

一方で転職者数が年々増加している今は、キャリアアップを理由にした前向きな転職が増えています。また、成長意欲の高い若い世代の中には「ホワイト企業すぎるため、もっと厳しい環境で自分の力を試してみたい」という理由で転職をする人も。

そんな世の中全体の退職理由の変化を踏まえて、改めて最近辞めた人たちの顔を思い浮かべてみてください。その人たちは、本当に「優秀ではない社員」なのでしょうか?

勘違い3. 採用対象外の人から応募があると困る

大前提として、カムバック採用枠で応募があったとしても、絶対に採用をしなければいけないわけではありません。選考を簡略化するケースはあっても、全くの選考なしに採用をすることはないのです。

つまり、仮に対象外の元従業員から応募があった場合は、通常の中途採用と同様、選考で不通過にすればいいだけの話です。

ただ、再雇用を希望する人は、覚悟を持って応募をすることが多いです。「仕方がないから古巣の会社に戻るか」と妥協の気持ちから応募をする人は少数であり、むしろ外に出たからこそ「戻ったらやりたいこと」のイメージを持っているもの。基本的には良い人材である可能性の方が高いです。

勘違い4. 社員の退職を誘発するのでは?

カムバック採用を推進することで、「いつでも戻って来られるなら辞めよう」と安易に考える人が増えるのを心配する人事担当者の方もいます。

ただ、勘違い3でご紹介した通り、再入社を希望する人全員を採用するわけではありません。応募後に選考をするのは、通常の中途採用と同じです。

大切なのは、カムバック採用を周知する際に「退職者全員を採用するわけではない」としっかり打ち出すこと。それが現社員へのメッセージにもなります。

カムバック採用には難しさも

ここまでカムバック採用の利点をご紹介してきましたが、一筋縄には成功しないのも事実です。

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1. 退職者にカムバック採用を認知してもらえない

元従業員が古巣企業の採用情報を検索することは稀です。たとえカムバック採用制度について採用ページに記載し、制度の開始をプレスリリースで流したとしても、多くの退職者に認知してもらうことは容易ではありません。

実際、プレスリリースを打った直後に応募があり、実際に採用もできたものの、その後の応募にはつながらず「一過性の効果で終わってしまった」と悩む企業も。

2. 応募の心理的ハードルが高い

再雇用ポジションへの応募を検討する際、多くの退職者は「当時の上司や同僚が受け入れてくれるのか」など、心理的なハードルを感じています。結果として、応募を断念してしまうケースも少なくありません。

3. 募集ポジションと再入社したいタイミングが合わない

再入社をしてもらうためには、退職者が「戻りたい」かつ「戻れる」状態にあることが必要です。退職者が希望するポジションが募集中であることを、その人にとって適切なタイミングで知ってもらわなければなりません。

カムバック採用を成功させるには?

ご紹介した難しさや課題を解消し、カムバック採用を成功させるためには、それぞれに対していくつかのポイントがあります。成功事例と合わせてまとめましたので、ぜひ以下よりご覧ください。

ABOUT US

アルムナビ編集長
2009年株式会社キャリアデザインセンターに新卒入社。求人広告営業、IT派遣コーディネーターを経て、働く女性向けウェブマガジン「Woman type」の編集者として勤務。2015年末に退職し、フリーランスに。2019年4月、業務委託でアルムナビ編集長に就任し、2020年10月より運営元の株式会社ハッカズークに“8割正社員”として入社。現在もキャリアデザインセンターの各種媒体の企画・編集・執筆にアルムナイとして携わる。