創業以来の「マインド重視」採用が「CyberZらしさ」の源

株式会社CyberZ 代表取締役社長である山内隆裕さんに、企業のOB・OGであるアルムナイの活用、そしてあらゆる人事施策のあるべき姿について、「成果につながるか否か」という経営者としての本質的な視点から、するどく切り込んでいただきました。

PROFILE

株式会社CyberZ 代表取締役社長
株式会社サイバーエージェント 取締役
山内 隆裕 

1983年生まれ。大学卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。2008年、モバイルサイト制作会社CyberX取締役に就任。2009年、モバイルマーケティング会社CyberZ設立と同時に現職に就任。また2012年より、サイバーエージェントのスマートフォン広告事業管轄、取締役に最年少で就任。2015年よりCyberZが提供するゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」の総合プロデューサーも務める。

 アルムナイにまで共有されている「CyberZらしさ」

——2015年にサイバーエージェントグループで導入された「ウェルカムバックレター」が当時非常に話題になりましたが、現在、全社的に「出戻り」を推進しているのでしょうか?CyberZ での出戻りに対するスタンスや、実際の状況について教えてください。 

まず、出戻りの実績についてお話すると、CyberZ では、この2年程をみると正社員として3名、アルバイトとして3名の実績があります。

新卒で入社して転職後、再入社に至ったケースや、派遣社員としてサポート業務に従事していた方が、退職後他社で経験を積み再び正社員として戻ってきてくれたケース、結婚や出産を期に退職したものの、アルバイトとして戻ってきてくれたケースなど、経緯は様々です。直近では、中途で入社したエンジニアの社員が転職後、再び戻ってきてくれることが決まりました。

「出戻り」を推進しているかどうかや、それに対するスタンスという観点でいうと、明確に推進も否定もしていないというのが正直なところです。

ただ、私たち CyberZ のように、独特のカルチャーを持ち、 市場や環境が頻繁に変化する環境では、社員がふと立ち止まる瞬間もあるでしょうし、挑戦心ゆえ他の事柄に強く心惹かれてしまったり、はたまた家庭の事情だったり、そういう一時的な理由で退職した社員が戻ってきてくれて、一緒に再び新しいことにチャレンジできるというのは素直に嬉しいことだと思っています。

——他の会社を知らない新卒入社の方に顕著なのですが、「一度外に出たことによって初めて古巣の良さを実感する」ということがあります。もし、CyberZ に出戻りされた方々から、そんな「戻ってきた理由」として挙がったものがあれば教えてください。

人がそれぞれ会社に求めるものは違って、多岐に亘るのですが、出戻り社員に限らず、新卒でも中途でも、共通して CyberZ に求めているものは、「成長したい」「市場を創りたい」「チャレンジしたい」という強い想いなんじゃないかと感じています。

年齢問わず、若いうちから大きな責任と当事者意識をもって働きたいとか、みんなで一丸となって大きな目標を達成したいとか。それに最適な環境として CyberZ を選んでくれているのではないでしょうか。

中途・出戻り問わず、すべての最終面接は私が担当していますが、そこで私が見ているのは、スキル面よりもマインド面なんです。もちろんスキルはあるにこしたことはないのですが、常に何かにチャレンジする精神があるか、安定よりも成長を迷わず選べる意欲があるか、さらに、変化を持続させるエンジンを持ち合わせているか、といった前提条件の確認ですね。

この求める人物像は創業以来、ずっと変わっていません。そして、「成長したい」「チャレンジしたい」という人に対して、CyberZが素晴らしい成長の機会を提供できているという自負もあります。

——変化の激しい業界、会社の中においても、不変の価値観で、それが社員~アルムナイまで一貫して、「CyberZ らしさ」として共有されているカルチャーの源なんですね。

はい、実際、出戻りではありませんが、辞めてもその価値観を共有しているアルムナイからも「この人、CyberZ に合うと思いますよ!」と紹介してもらえる、「アルムナイ・リファラル」のケースもあるくらい浸透しているようで、嬉しいですね。直近の中途採用においても、そのケースで1名入社が決まりました。

マインドと比べてスキルをそれほどまでには重視しない理由の一つは、このインターネット業界は特にそうだと言えますが、スキルというものは時間とともに陳腐化するからです。

また、スキル偏重で採用された人はどうしてもそのスキルに固執してしまう傾向があり、そうすると、新しいスキルでゼロから始める仕事に移行するのを避けがちになってしまうことがあるんですね。

それは、言い換えれば市場に取り残されるということで、組織がそういった人材の集合体になってしまうのは、インターネット業界では致命的。だからこそ、主軸を「変化・挑戦」に対する強いマインドに置き、会社全体が新しいことに寛容な体質でい続けなければならないんですね。

たとえば、3年前の2014年を振り返ってみると、スマートフォンで動画見ている人たちはこんなに沢山いたでしょうか?さらにその3年前の2011年、スマートフォンで動画やリッチコンテンツ自体こんなに快適に閲覧できていましたか?もっと遡れば、その3年前の2008年は、まだガラケーの時代ですよね。それくらい、テクノロジーやインターネット業界における3年スパンというのはガラッと変化を伴うわけです。

ですから、2008年にガラケー向けビジネスに注力していた会社はスマートフォン向けビジネスに遅れ、2011年にスマートフォン向けビジネスに注力していた会社は動画ビジネスに遅れたんです。変化を見越すだけでなく、その上で新しいことにチャレンジした会社だけが生き残る業界なんですね。

個々人のスキルがすぐに陳腐化してしまうのも、このスピード感ある業界ならではだと思います。求められることはどんどん変化しますので、マインド面に加え変化対応力も重要視しています。

——「今」だけではなく「未来」を見据えた選考を経ているからこそ、出戻りされたアルムナイの方々も、変わらぬ「CyberZ らしさ」を信頼・期待して、戻ってきているのでしょうね。

そうですね、「CyberZらしさ」というのは感じてもらっていると思います。逆に、そういった価値観に合わない人や、変化についていけない人とは、それを真摯に議論すべきだと思っています。

それは、決してその人がビジネスパーソンとしてダメというわけではなく、インターネット業界、もしくは、CyberZという会社には合っていないというだけなので。会社の価値観を明確にするというのは、それを無理に押し付けることではなく、お互いを理解し合ってギャップがない状態にしよう、ということだと思っています。

 目的と手段が逆転しがちな人事施策。変化に対応できる試行錯誤を。

——ここまでお話を伺ったように、CyberZ のように成長を志向し、業界の激しい変化に食らいついていくことは、いわゆる「アップ・オア・アウト(Up or Out)」のような厳しさもあって、そこに身を置けるのは若いうちだけで、長くは働けないのではという心配の声はありませんか? 

俗にいう外資系企業の「アップ・オア・アウト」とは本質的に違うものだと思っています。あくまで一般的な話で例外は数多くあると思いますが、昇進できるかどうかのベースにあるのは営業成績による評価、つまり、既存市場におけるパイの奪い合いですよね。

一方、CyberZ で評価しているのは、いかに新しい市場を作り、新しいビジネスをするか。純粋に「新しい価値を創造したい」とか「大きなことを成し遂げたい」というワクワクする想いによるものだからこそ、みんな一丸となって楽しんで取り組めているのだと思います。

たとえば、今私たちが力を入れているゲーム動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」やeSports大会「RAGE」にしても、市場自体が海のものとも山のものともつかぬ、当たるか当たらないかというところから始めて、今まさに来はじめている流れに現場が必死になってチャレンジし、興奮しているところです。

その醍醐味は、既存のビジネスとはまったく別の次元の話ですよね。そういうチャレンジを心から楽しめるタイプが集まっているんだと思います。

——一方で、すでにサイバーエージェントグループの豊富な人事施策に加えて、「キッズホリデイ(*)」をはじめとした、CyberZ でも独自の施策を次々と生み出しているのは、より良い「働きやすさ」の追求によるものでしょうか? 

(*)キッズホリデイ: 子どもの誕生日が休暇になる福利厚生制度

1. 子どもの誕生日が祝日に
毎年、社員は子どもの誕生日が祝日になります。子どもが中学校を卒業するまで毎年付与されます。

2. キッズホリデイサポート
社員は当社が提供するテーマーパークチケットやホテルでのお食事券など複数のサポートのうち、好きなものを選択して利用することが可能です。

https://cyber-z.co.jp/news/pressreleases/2016/1014_4006.html

そうですね。創業から8年が経ちますが、基本的にすべての施策を「成果ファースト」で考えています。規模も大きくなるなどといった状況の変化の中で、成果を出すために必要なものを常に考え、用意しています。

CyberZ独自の人事制度「キッズホリデイ」にしても、家族を持つ社員が増えてきたため、彼らが成果を出せる環境を作らなければいけない、そのためには家族との時間も大切にしてほしいと考えました。

人事施策は、手段と目的が逆になりがちなので、浸透して成果に貢献するものを、タイムリーに生み出し続けるのは難しいですよね。出戻りをはじめとしたアルムナイ関連制度も同様で、「他社がやっているから」などの動機で、制定すること自体を目的にするのではなく、あくまでもアルムナイの活用が成果につながるかどうかで考えるべきものだと思います。

ただ、良い制度はあればあるだけ良いと思っていますし、それによって社員同士のつながりが増えれば増えるほど、「CyberZ らしい」魅力やカルチャーの根幹となるものでもあるので、これからも主軸を「変化・挑戦」に置き、試行錯誤して会社づくりをしていきたいと考えています。そんな私たちとともに成長し、これまでにない新しい大きなことを成し遂げ続けたいと思う方は大歓迎です。いつでもお待ちしています。

>>株式会社CyberZ
>>株式会社CyberZ:採用情報

編集後記

今回、山内さんにインタビューを依頼した背景の一つとしてあったのが、一見矛盾してるようにすら見える、サイバーエージェント(グループ)のアルムナイに対するスタンスでした。

たとえば、新しい「終身雇用」のかたちとして、「実力主義型終身雇用」を提唱されている一方で、「ウェルカムバックレター」といったアルムナイ施策も存在しています。

その山内さんからお話を伺う中で見えてきたのは、これは矛盾でもなんでもなく、「成果ファースト」で考えた時、優秀な人材が変化に適応し、最大のパフォーマンスを発揮し続けるためのもの、ということ。

出戻りに対する山内さんのスタンスとして、「明確に推進も否定もしていないというのが正直なところ」という言葉の通り、カルチャーフィットしている/する人材をいかに、「ウチ(社内)」のみならず、「ソト(アルムナイを含む社外)」にも保持しておくかということに尽きるんだと思います。

この変化の速い時代、スキルマッチの観点だけの採用や雇用では、イノベーションを起こすことは困難です。その点、CyberZ のようにミッションマッチ、カルチャーフィットの観点から「成果ファースト」を貫く考え方は、企業ごとに最適化した「アルムナイ・リレーション」を見出すうえでヒントになると感じました。(アルムナビ編集長・勝又 啓太)