モバイルファクトリー: アルムナイによる「卒業生講演会」潜入レポート

先進的な取り組みが人事界隈でよく知られる株式会社モバイルファクトリーでは、退職した“卒業生”が講演をする「卒業生講演会」を定期的に開催しています。

毎回異なるキャリアを歩んでいるゲストを招き、企業とアルムナイがつながる機会として社員からも好評のイベント。

2007年から2015年まで在籍した現・株式会社ネクストマーケティング取締役 祭原祐氏を招いて講演が行われた第4回目の様子をレポートします。

PROFILE

株式会社ネクストマーケティング取締役
祭原 祐 

1984年生。法政大学経営学部卒。2007年にモバイルファクトリーへ入社し、広告・メディア事業やソーシャルゲーム・ネイティブアプリ事業、新規事業の立ち上げに従事。2015年5月よりマイネットへ参画し、ゲームサービス事業のマーケティング、及び新規事業のCroPro(クロプロ)を統括。2017年2月より執行役員に就任し2018年1月10日より現職。

卒業生が古巣でキャリア講演。退職後に「はじめまして」が生まれるイベント

祭原さん(モバイルファクトリーのエントランスにて)

卒業生講演会は、五反田にあるモバイルファクトリーの会議室で行われます。企業を退職した卒業生が古巣で現役社員に向けて講演をするという、なんとも斬新な取り組みです。

卒業生と現役社員が交流できる機会になれば」という想いと、既存社員、特に自社しか知らないメンバーにとって視野を広げ自身のキャリアについて考えてもらう機会になればという想いから独自に始め、今回で4回目の開催となりました。

就業時間後に合わせ、業務を終えた社員たちが少しずつ集まってきました。「お疲れ様ですー」と仕事の延長で挨拶を交わす参加者たちの中には、「お久しぶりです」「はじめまして」という声も。実はこの講演会、毎回何名かアルムナイの方も参加しているのだそうです。

最近入社した社員とすでに退職しているアルムナイが講演会の前から交流し、初対面でもお互いに垣根なく接しているところに、そういう企業文化が根付いているのだなと感じました。

参加者は40名程度で、部署や年齢、経歴はバラバラ。登壇者である祭原さんが退職されてから3年近く経っているため、祭原さんと被っていた人は参加者の7割程度とのことでした。今回の講演で「話にはよく聞いていた祭原さん」と初めてお会いするという方もいて、社歴の浅い社員にとっても企業文化に溶け込むいい機会となりそうです。

祭原さんは、2005年に約半年間モバイルファクトリーでインターンとして働き、2007年に新卒第二期生として入社しました。2015年4月に株式会社マイネットに転職してから、ゲームサービス事業や新規事業に携わり、現在は関連会社である株式会社ネクストマーケティングの取締役を務めています。

今回は「お世話になったモバファクの皆さんのキャリア形成の参考になれば」と講演を引き受けたとのこと。新卒から育ててもらった会社への恩返しの気持ちもありつつ、祭原さんご自身も、古巣で現在働いている人たちと交流できるのを楽しみにされていたようでした。

会場は超満員。輝かしい経歴の元社員からどんな話が聞けるのか、期待が高まります。

転職の理由をオープンに話せるモバイルファクトリーの社風

会場には知っている顔も多いだけに、マイクも使わず、フランクなトーンで講演が始まりました。参加者との会話を交えながら進めていくところには、社内イベントらしさがあります。

簡単な自己紹介のあとに、モバイルファクトリー在籍時代にどんなことをやっていたかの話がありました。

ブログ広告の営業・企画が最初の仕事で、その後モバイル広告の営業・企画・ディレクションやソーシャルゲームの運営チームのマネジメントを経て、モバイルコンテンツ関連の新規事業立ち上げに関わります。在籍期後半には、現職への転身のきっかけにもなった恋愛ゲームのプロジェクトマネジメントやマーケティング、位置ゲームのマーケティングやアライアンスなどに携わります。

在職中に行ってきた業務については、当時一緒にやっていた社員の名前も出てきて会場が盛り上がりました。会場前方の参加者に確認しながらトークを進める場面もあり、ときどき笑いも起こって和やかな空気になっていきます。

この頃にも、業務を終えた社員がひとり、ふたりと入ってきました。なお、参加できない人も見られるように、イベントの様子はSlackでLIVE配信していたようです。トーク中にパソコンを叩いている人がやたらと多いと思ったら、Slackチャンネルでチャットが飛び交っていたとか……。あとから見せてもらうと、リアルタイムでトーク内容が実況され、様々なコメントが飛んでいました。

その後、気になる転職の理由の話になります。位置ゲームの拡大にコミットしていたところマイネットからお誘いがあり、「成功経験のある人のもとで、マーケティングや新規事業にかかわれること」が転職の決め手になりました。

転職前から具体的な事業構想の話があり、事業の鍵としてマーケティングにスポットがあたる体制のなか、実際に自ら挑戦するイメージが湧いたといいます。

転職の決め手については、参加者たちも特に熱心に聞いているようでした。定年まで一社に勤め続ける時代ではなくなった今、いずれは自分にもやってくる「転職」という機会にどういう判断をすればいいのか、自分ゴトとして捉えている印象を受けました。

「またゲーム会社に行くの?」という反応もあったといいますが、祭原さん自身のなかではこういった理由から納得して出した決断だったそうです。

転職先のマイネットでぶつかった壁を成長に変えた経験

マイネットには2015年5月に入社し、退職後のブランクもなくすぐに新しい事業に取り組みはじめました。1年目は相互送客ネットワーク「CroPro」の立ち上げに携わり、順調な滑り出しに見えましたが、その後ご自身で「どん底」と振り返るような時期が訪れます。

マイネットに入社してからの状態の推移を、ホワイトボードにグラフを書いて説明してくれました。

祭原さん自身のライフライン(講演資料より)

新規事業の仮設検証に携わっていた時、祭原さんは曖昧な思考のまま意思決定をしてしまい、リテイクを連発していた時代だったといいます。

しかしその後、広告室を見ることになったことが復活のきっかけになります。数字を見て定量的な判断をしていくなかで、それまで定性的に物事を判断してしまっていた自分に気づきました。広告を見ることで定量的な意思決定の精度が向上し、自分の意思決定にも自信が持てるようになりました。

仕事をしていくうえでぶつかる壁は、会社や業務内容が違えばまったく違うものになります。しかし祭原さんは「この話で伝えたいのは方法論ではなくて、自分はこうやって復活したという経験を共有したい」と話します。

どん底から這い上がったエピソードを自分の経験から話しつつも、誰もが自分に当てはめて考えられるようになっていて、参加者たちは真剣に耳を傾けていました。

自分なりの判断基準で、環境を選び取っていく

「挑戦するから課題が出てくるのであり、その課題を解決する過程にこそ成長がある」と学んだといいます。「現在自分がもっているスキル」と「課題解決のために必要なスキル」のギャップに成長機会があるという話は、この経験をした人だからこそ言える説得力のある理論でした。

こうした期間を経てきた今、祭原さんの「環境選択の判断基準」は転職時とは少し変わっています。1つめに「人」がくることは変わりませんが、加えて、「成長機会があること」「よいイシューに取り組めること」の2つを意識しているそうです。

成長している業界・会社を選ぶ、成し遂げたいことから逆算して行動することで、より多くの成長機会が得られると考えています。そして、社会的に意義のある課題解決に取り組めて、まだ誰もやっていない事業内容であることも大切にしています。

祭原さん自身は、これらの条件が揃った環境を「新規事業」に期待していて、今後も変わらず新規事業に携わっていくつもりだそうです。

「最終的に自分のやりたいことをどこで実行するかには、あまりこだわっていない」という最後の言葉が、これからの時代の働き方にマッチした考え方だと感じました。

必ずしも企業に居続ける必要はなく、自分のやりたいことに合わせてタイミングが来れば卒業したり、形を変えて関わったりしながら、活動のフィールドを変えていく。そんな柔軟な“会社”との関わりかたについて考えさせられた講演でした。

講演を聞いた参加者たちは、「自分のキャリアの参考になった」「卒業後に活躍されている方のお話が聞ける機会があるのはいいこと」と満足の様子でした。

「卒業生講演会」というイベントを他に先駆けてスタートさせたモバイルファクトリーの人事担当によると、毎回社員たちからも好評で、アルムナイの皆さんも講演依頼を快く引き受けてくれるそうです。

アルムナイとの関係を絶やさずに財産にし、卒業後にまた新たな関係や価値が生まれている。アルムナイ・リレーションのあるべき姿を日本でいち早く実現させている事例を見ることができました。

辞めた人同士が古巣に集まり名刺交換。交流会で見えた新しい“会社”のあり方

講演会終了後には、そのままの会場で交流会が行われました。講演会には参加できなかったメンバーも来て少し入れ替わりがあり、フレッシュな空気で交流が始まりました。

通常の「社内交流会」と明らかに違ったのは、そこで名刺交換がはじまること。今はそれぞれ違う業界で活躍する元社員たちが、古巣のオフィスに集まって名刺交換をする――。この未来的な光景が見られるのは、まだ日本ではここだけかもしれません。

「あの人は○○社に転職したらしいよ」とは噂で知ることがほとんどで、改めて辞めた会社に戻ってきて自己紹介をするなんて、なかなか聞くことはありません。転職先の会社のユニークな名刺を見せ合ったり、近い業界で話が盛り上がったりしていました。

交流会には、なんと2008年退社という古株のお二人がいらっしゃっていました。現在はライフスタイル事業を行うアイランド株式会社の取締役を勤める福本さんと、公認会計士や中小企業診断士などの資格を活かして個人で活動されている間瀬さんです。福本さんは、在籍時には講演者の祭原さんの上司だったそうです。

お二人とも辞めてから3〜4年ほどはモバファク社員とのつながりもあったそうですが、だんだんと会う頻度も減ってしまうので、こういう会社主催の機会があるおかげでつながりが保てているとのことでした。

まさに理想的なアルムナイと会社との関係!ということで、アルムナビを運営するハッカズークが作っている「アルムナイ・ステッカー」をお渡ししました。

※アルムナイ・ステッカー・キャンペーンは終了しております

アルムナイ・ステッカーを持った間瀬さん(左)と福本さん(右)

現役社員もいるなかでステッカーを受け取り、「もっと会社を成長させて、このステッカーの価値を上げてほしいよね。(現役社員の人たち)頑張ってね!」と熱い激励をされていました。

一時期は在籍していた会社に対して、古巣に活躍してほしいというアイデンティティ意識は強いようです。

講演者の祭原さんの周りには終始人が集まっていてお話はできませんでしたが、事前にお渡ししたアルムナイ・ステッカーはちゃんとパソコンに貼ってくださったとのこと。このステッカーをきっかけに、「モバファクアルムナイ」としてさらによいつながりが生まれ、ますますご活躍されることを願っています!

>>祭原さんのステッカー授与の模様はこちら

編集後記

退職したらもうその会社との関係は終わり……。日本で当たり前とされているこの価値観を、ポジティブに壊しているのがモバイルファクトリーという会社です。

参加させていただいた「卒業生講演会」では、アルムナイと現役社員が垣根なく交流していました辞めたから気まずい、他社の人だから接しづらい、という空気はまったく感じられません。辞めてから10年経つ人も、入社して間もない社員も、フラットに受け入れる土壌ができています。

「同じ釜の飯を食う」ということわざがありますが、人生のどこかで一定期間同じ職場で働いていたという経験は、何年経っても人と人とをつないでくれるのだと実感しました

「古巣で行う名刺交換会」など、未来の会社のあり方を見せてもらえたイベントでした。これからも人事の最先端企業として、業界を引っ張っていってくれることを楽しみにしています!(アルムナビ編集部)