退職は「仕事・生活・遊び」を諦めない働き方をつくる絶好のチャンス/最高の会社の辞め方 Vol.1

アルムナビのテーマは「退職で終わらない、企業と個人の新しい関係を考える」。そのためには、退職時の「個人側の辞め方」と「会社側の送り出し方」が重要です。

では、個人が会社を辞めた後も古巣企業とつながりを持ち続けるためには、どんな辞め方をしたらいいのでしょうか。

そのヒントを連載「最高の会社の辞め方」で、最高の会社の辞め方プロジェクトの皆さんと考えてみましょう!

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いま「最高の会社の辞め方」が必要な理由

最高の会社の辞め方プロジェクト発起人の佐野創太です。年齢・職種・業界も多岐にわたる多様なメンバーで活動しております。

私たちのプロジェクトについて、先日アルムナビにインタビューしていただき、それをきっかけに、アルムナビで連載をさせていただくことになりました。

第1回目はそもそも「最高の会社の辞め方」とはどういったものか、「なぜいま『最高の会社の辞め方』が必要なのか」をお話しします。

私たちのプロジェクトでは、「個人と企業の新しい関係が始まる退職」、それを「最高の会社の辞め方」と定義しています。退職後もビジネス関係やポジティブな関係が続く辞め方。言い換えれば「円満退職2.0」とも呼べるかもしれません。

しかし、なぜいま「最高の会社の辞め方」が必要なのでしょうか。

現在、私たち個人が「長期的なキャリアの土台」を作る必要性がかつてない程に高まっています。その背景には「終身雇用の終焉」、正確には「終身雇用を維持できない」企業の本音があります。例えば、トヨタの豊田章男社長が終身雇用について「企業にインセンティブがあまりない」と話したことは記憶に新しいです。

「採用学」を提唱している服部泰宏先生は著書の『日本企業の心理的契約 組織と従業員の見えざる約束』の中でこう記しています。

これまで日本企業では、「長期雇用保障」が当然遵守されるべき約束として広く認識されてきた(Abegglen,1958)。この場合、特定の企業による契約の不履行は、ただちにその企業の評判の低下につながりかねない。したがって企業側は、多少無理をしてでも契約を遵守するインセンティブを持っていた。ところが今日のように複数の企業によって契約の不履行が行われている場合、契約の不履行が特定の企業の評判低下にはつながりにくくなる。「みんなもやっている」からである。

日本企業の心理的契約 組織と従業員の見えざる約束』(著・服部泰宏)

つまり「トヨタが終身雇用を維持できないなら、弊社も仕方ない」と考える企業が増えることが予想されます。

こういった「終身雇用を企業が諦めはじめている時代」には自分でキャリアのセーフティーネットを作る必要があります。意図的に「最高の会社の辞め方」をし、退路を断たずに複数の出戻れる先や未来の取引先・副業先を作る。言ってしまえば「複数の依存先をつくる働き方」です。

例えば私自身、前職の上司とともにWebメディアを運営しており、編集長の仕事をいただいています。友人の起業家は前職の社長から出資を受けています。

「最高の会社の辞め方」は、転職や独立をするたびに終身雇用に代わる「キャリアのセーフティーネット」をつくってくれるのです。

「最高の会社の辞め方」は、希少性の高い人材でいるための練習になる

ここまで「最高の会社の辞め方はキャリアセーフネットになる」とお伝えしました。会社が個人のキャリアを面倒見きれなくなった今必要な「守りのキャリア戦略」と言えます。

一方、「最高の会社の辞め方」は「攻めのキャリア戦略」の意味も持っているのです。「最高の会社の辞め方」をすると「希少性の高い人材」になり、時間と報酬、気の合う仲間を手に入れられます。

「希少性」は言い換えれば、前職の同僚や上司からみて「他の人に代え難い価値のある人材」として認知されている状態を指します。

どんなに社風とマッチしていても、どんなに退職までに実績があっても「他にも近しい人ひとがいる」のでは、前職と今後も続くビジネス関係を続けることは難しいでしょう。社内にも市場にも代えのいない人材であることが「希少性の高い人材」です。

そして、この「希少性高い人材」になるには社内の困りごとや必要だけどやれていない仕事といった「需要」と、その需要を満たす「供給」を自分が持っていることを示す必要があります。

「需要」を知るにはその会社をよく知る必要があり、社内にいる期間は最も「需要」を知る動きが取れます。「供給」に関しても、見つけた「需要」を本当に満たせるか、社内にいるうちに実験ができればベターです。

こうした動きは、もちろん入社した当初から意識し続けるのが理想です。ただ、今後もこの会社で働いていこうと思っている時から意識するのは難しいとも考えています。だからこそ退職を考え始めた頃から退職までの期間、社内にいるうちに需要と供給を見極める練習をする。これが「最高の会社の辞め方」につながり、他社に転職しても「希少性の高い人材」でいるための練習になるのです。

好きな働き方と生活の手に入れ方のヒントは「砂漠の水」にあり?

「希少性の高い人材」になり、時間と報酬、気の合う仲間を手に入れる。「それは一部の恵まれたひとだけの働き方だよ」と思われてしまうかもしれません。

しかし、私は諦められませんでした。母が体調を崩し、介護離職のように退職した私は「貢献できる好きな仕事、家族と過ごす大切な生活、子どもの頃から好きな音楽を楽しむ遊びの時間の何一つ諦めたくない」と強く思い、周りの先輩に相談をはじめました。

すると「身勝手な願い」に見えるこの働き方を既に実現している人がたくさん見つかり、再現性があることがわかってきました。

その中でも、わかりやすい例え話をしてくれた先輩起業家Dさんがいます。Dさんと私の会話をお伝えします。

Dさん:例えばいま砂漠にひとりでいるとする。街は四方を見渡しても見つからない。もう半日も水一滴飲んでおらず、喉がカラカラだ。そこに水を売りに来たひとが近づいてきてこう言った。「500ml、1万円です」。どうする?

佐野:買うしかないですね。

Dさん:僕も買うと思う(笑)。でも、中身は家の蛇口をひねって出てきた水らしい。

佐野:それでも、他に水を売っているひとがいなければ買うと思います。

Dさん:そう。この水が買われる理由は「おいしさ」でも「新鮮さ」でもない。「希少性」なんだ。「他にない」から買われる。これはキャリアでも全く同じ。

佐野:「自分にしかできない仕事、希少性があれば、お金や時間などは好条件で提案できる」?

Dさん:そう。だから僕らがキャリアをつくっていく上で必要なことは、「その経験や知識は希少性を生むのか」なんだ。例えば英語力とプログラミングスキルをつけても、「ハーバード卒のインド人エンジニア」以上の価値を発揮するのは難しいよね。

でも、「日本人しかいない企業だけど、ECサイトをつくって海外展開したいメーカー」に就職すれば英語とプログラミングができるひとがいないから、とても希少性が高い。このポジションを見つけることが大事だよ。

Dさんは、「キャリアは絶対評価ではなく相対評価。再現性は絶対にあるから仕事も生活も遊びも諦めないでね」と勇気づけてくれました。

Dさんは「希少性」が仕事・生活・遊びのどれも諦めない生き方を実現したと話します。だからこう提案してみました。

「退職を意識し始める頃から実際に会社を辞めるまでの過程で、希少性の高い働き方をする練習ができないでしょうか? 例えば今の会社とビジネス関係を続けられるセーフティーネットを作りたい。そう考えたら、会社の需要を見つけて自分にしか供給できないものを見つける練習ができると思うんです」

すると、「それはできるね。しかも退職の日が決まっていたら会社のことを調べて、何が求められているかを真剣に考えるだろうし」とのこと。

こうして、締め切りが決まると集中力が増す「夏休みの締め切り効果」を利用した、「最高の会社の辞め方」を思い至ったのです。

仕事・生活・遊びのどれも諦めない「最高の会社の辞め方」に興味を持って頂けたでしょうか? 連載の2回目は具体的な「最高の会社の辞め方」の方法やステップをお伝えします。

最高の会社の辞め方プロジェクトからのお願い

読者の皆さまからの質問や頂いたご意見をどんどん取り入れていきたいと思っています。ご質問やご要望がありましたら、ご都合の良い方法でぜひご連絡ください。

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記事に関わった「最高の会社の辞め方プロジェクト」のメンバー

佐野創太
「最高の会社の辞め方」発起人。円満退職を超える「仕事・生活・遊びの何一つあきらめない生き方ができる」退職の学問化を進めています。普段は複業編集フリーランス、長野でフルリモート、妻ファーストの1児の共働き父です。

JYP
人材紹介業の中の人。転職者数百人、自社の退職者百人以上の素敵な退職もそうでない退職も間近で見てきました。どうせ辞めるなら素敵な辞め方を。

Zoey
Adult Education for Social Changeというプログラムに社会人留学中。前職はエンジニア。今も未来も楽しめるワーク・ライフスタイルについて考えています。

せっきー
ロスジェネ・アラフォー会社員。転職経験0だが、新卒入社した子会社からグループ再編・組織変更を経て8法人目で現在は親会社へ。「会社とは何か?」を10年以上研究し、組織の酸いも甘いも知った気になっていたら『最高の会社の辞め方』と出会い解脱を夢見る。

アンヂェラ
人材会社で営業、新規事業企画を経てIT企業で人事担当として働き始めて4年目。転職が当たり前・売り手市場の業界の人事として日々「”あえて”会社で働くことを選んでくれている社員」や「退職した社員との関係性」に思いを巡らせてている。

SE
人材営業、官公庁の就労支援事業責任者を経て転職。現職は人事。学生時代から脳科学研究を愛し、ニューロンの構造図を描くのが得意。様々な角度から「退職」について追究したい。前職の大先輩たちから栗や柚子をよくもらう「孫スキルの高い」退職を実現した。

MK
「最高の会社の辞め方」イラストレーターということでゆるい絵をかいています。普段は人事をやってます。

Yusuke
スタイリスト兼エンジニアとして活動しております。前職が故郷になる、そんな辞め方を皆さんで考えていきましょう!