アルムナイが“辞めた会社”を応援し続ける理由「好きゆえに退職交渉のしんどさもあった」

現在アルムナビでは、「#辞めた会社とアルムナイを応援しよう」キャンペーンを実施中。それに伴い、キャンペーン参加者2名が登壇するオンラインセミナーを5月21日に行いました。

題して、「退職者を “応援団” にする秘訣〜再雇用からビジネス連携まで幅広い繋がり〜」。

コロナショックは、個人にとって自身のキャリアを見直す機会にもなりました。状況が落ち着いた頃に、転職を考える人は増えるのではないでしょうか。

そこで注目したいのが、アルムナイ(卒業生)との関係構築です。辞めてもなお古巣の会社が好きだという2人のアルムナイの話から、そのヒントを探ります。

男性育休コンサルタント(ポートフォリオワーカー)
広中 秀俊さん(写真左)
2000~2019年 ミサワホームに新卒入社。住宅営業、財務経理、まちづくり事業、働き方改革推進に従事。2019年4月~独立。男性育休コンサルタントを中心として、ポートフォリオワーカーを実践中 >>広中さんの「ALUbum」はこちら

株式会社ゴーリスト/HR事業部/取締役・HRog編集長
菊池健生さん(写真中央)
2009年大阪府立大学工学部卒業、株式会社キャリアデザインセンターへ入社。転職メディア事業にて法人営業、営業企画、プロダクトマネジャー、編集長を経験し、新卒メディア事業のマーケティングを経て、退職。2017年、ゴーリストへジョイン。2019年、取締役就任。人材業界の一歩先を照らすメディア「HRog」の編集長を務める >>菊池さんの「ALUbum」はこちら

モデレータ:株式会社ハッカズーク 広報&アルムナイ・リレーションシップ・パートナー
築山 芙弓(写真右)
2015年アイタンクジャパンに新卒入社し、長期インターン専門メディア「キャリアバイト」および新卒向けスカウトサービス「iroots」の営業・カスタマーサクセスに従事。2018年8月に親会社のエン・ジャパンへ転籍。2019年3月より現職にて広報およびアルムナイ・リレーションシップ・パートナーとして、「アルムナイ」という新しいコンセプトを広めるべく奮闘中 >>築山の「ALUbum」はこちら

公私ともに「前職との交流」がある

築山:まずは現在の前職とのつながりや交流について教えてください。

菊池:僕自身がゴーリストに転職する前からキャリアデザインセンター(以下、CDC)はゴーリストのサービスを使っていて、今も取引が続いています。ビジネスと関係ないところだと、非公式の野球部があって、監督をいまだにやっています(笑)

野球が終わった後のご飯では、野球から仕事の話まで相談を受けることも多いですね。延長戦として飲みに行って毒抜きみたいなことはやらせてもらっています。

広中:私は昨年に退職して1年たったところです。在籍中は営業や経理、働き方改革など、いろいろなことをやって社内の人脈がそれなりにあったので、社内の有志団体を立ち上げて代表を務めていました。今もそのメンバーとは飲みに行ったりしていますね。

広中:また、営業の仕事をしていた約20年前に担当していた入居者の方とは、いまだに年末にカレンダーを持って行ったり年賀状のやりとりをしたりと、関わりがあります。

築山:ミサワホームの方々とはもちろん、当時のお客さまとも関係が続いているんですね。

広中:特に私は新築物件の営業だったので、設計から家ができるまで、1年以上お客さんと関わりがあったんです。そうすると親戚みたいな関係になってしまうんですよ。初契約のお客さんのところにはアポなしで行ってもご飯が出てくるような関係性です。

菊池:実家みたいですね(笑)

広中:仕事面では、退職してすぐに声を掛けていただき、まちづくりに関するお手伝いをしています。私が持っているネットワークを社員のメンバーも知っていたので、そこのコミュニティと一緒にできないかという話でした。私も古巣のカルチャーはよくわかっていますし、協業までスムーズに話が進みましたね。

築山:菊池さんは前職とビジネスをやる上で、やりやすさ、もしくはやりにくさを感じることはありますか?

菊池:最低限の気遣いはもちろんありつつも、より込み入った話や踏み込んだ話がしやすいというのは感じています。元々社員同士の距離が近い会社ですし、担当者は同期ですし、打ち合わせに行くと「社員かと思った」みたいなことを言われます。

もう辞めて3年経ちますが、今も近い関係で付き合ってくれているのはすごく恵まれていると思います。やりにくさはあまり感じていないですね。

築山:セミナー参加者の方から「辞める前から退職後も関係性を続けられるようにしようなど、意識されていましたか?」と質問がきています。いかがでしょう?

広中:部門横断の有志団体をつくっていたので、業務ではなく人でつながっているという感覚は在職中からありました。社内メールが使えなくなっても関係性が途切れることはなく、自然とSNSでやりとりしていますね。

菊池:僕も野球部を通じて交流が続いていますけど、そういう団体があると辞めてもつながりやすいのかもしれないですね。

古巣の会社には恩を感じているし、単純に好き

築山:お二人のお話を伺っていると古巣の会社を応援している印象を受けるのですが、そういう感覚はあるのでしょうか?

菊池:応援というと大げさだし、おこがましい感じがします(笑)。お願いされてやっているわけではないし、応援している感覚もないんですけど、単純に古巣のことは好きですね。

広中:それはありますね。

菊池:新卒で入った会社っていうのも大きいと思っていて、今はコロナ不況と言われていますが、僕が入社した時はリーマンショックで不景気だったんです。その時に鍛えられた経験が今まさに生きていると感じているので、足向けて寝られないというのは思っています。

築山:不景気の時代に入社ということで、苦労もあったんじゃないかなと思います。それでも今なお付き合いたいと思うのは何でなんでしょう?

菊池:入社当時、僕は営業に配属されたんですけど、全然売れなかったんですよ。でも、そういう自分に向き合い続けてくれた上司やチームのメンバーがいて、厳しいことも耳の痛い話もちゃんとしてくれたんですね。

良い環境に恵まれたと思っていますし、自分がマネジメントをする基礎にもなっていると思っています。まぁ、入社してみて「思ったよりもドタバタだったな」とは思いましたけどね(笑)

築山:広中さんはいかがでしょう?

広中:私も最初は営業だったのですが、菊池さんと同じく全然売れなくて、教育してもらったっていう感覚が強くあります。その後、お金周りを勉強したいと希望を出して経理に異動させてもらって、借方貸方もわからないような状態からスキルをつけさせてもらいました。恩はとても感じていますね。

あとは、単純に商品が好きなんです。ミサワホームの家ってかっこいいんですよ。入社を決めた理由の一つが「デザインがいい」でしたし、今なおCMを見て「かっこいいな」と思います。菊池さんは前職の何が好きだったんですか?

菊池:人が一番大きいですね。僕らの同期はリーマンショックの不景気の時から社会人がスタートして、会社自体の雰囲気は暗かったんですけど、そこをみんなで乗り越えた感覚があって。同じ釜の飯を食った仲間であり、「高校の部活を3年一緒に頑張った人たち」みたいなイメージがあります。

感情に訴えるような引き止め方はズルイ

築山:会社のことが好きだからこそ、退職を伝える時のドキドキも大きいのではと思います。「退職時の体験が悪いと退職後への印象が悪くなる」というアンケート結果も出ているんですけど、その辺りはいかがでしょう?

広中:私の場合は副業っぽいことをずっとやっていたので、いつか辞めるんじゃないかっていう雰囲気を皆さん感じていたんだと思います。なので「やっぱりか」という感じでした。

退職する半年前くらいに辞める旨は伝えていて、後任の準備なども対応してもらい、すごくスムーズに辞めさせてもらったように思います。転職ではなく独立だったこともあり、溜まっていた有給もしっかり取らせてもらって、非常に良い辞め方をさせてもらいましたね。

菊池:愛を注いでもらったがゆえに……というのは、正直ありました。会社の規模が大きくなって、自分が望んでいた環境とは変わってきたことから別の道を歩む決断をしたわけですが、会社自体は好きだったんですよね。だからこそ、感情に訴えるような引き止め方はズルイなと。

そんな感じで退職交渉はしんどいこともありましたけど、最終的には背中をポンと叩いて「頑張ってこい」「お前の中で腹が決まっていて、止めることができないのなら活躍を祈る」と言ってもらいました。

築山:同僚の反応はいかがでしたか?

菊池:驚いていましたね。僕は会社のことが本当に好きでしたし、一番辞めなさそうなキャラだったので。「まさかお前が先に辞めるとは」って言われることは多かったです。

あとは同僚に関していうと、在職期間内でタスクの引き継ぎはできても、考え方は当事者にならないと分からないことも多いので、「気軽に相談に乗るよ」というのは伝えていました。それももしかしたら現役社員との交流がまだ残っている要因かもしれないですね。

「すごく優秀です」のメールに救われた

築山:「引き継ぎをしっかりすることが重要」というのもアンケート結果で出ています。ちなみに菊池さんは退職交渉が大変だったということですが、辞める時にやってもらってうれしかったことありますか?

菊池:もともと現職の代表が前職の役員と知り合いで、僕が転職をする際に「菊池さんがうちに転職することになって、不義理で申し訳ありません」みたいなメールを送ったそうなんですね。

そうしたら「非常に優秀で気持ち良い男です。これからのCDCを作っていってほしいと思っていました。そういう人なのでよろしくお願いします。彼みたいな人が抜けないような組織を改めて作っていこうと思いました」と返信がきたそうなんです。

それを知った時は泣きかけましたね。心打たれましたし、退職交渉のしんどさが全て報われました。加えて、次の環境で絶対に成果を出してやろうと気持ちのスイッチが入りました。

築山:それはうれしいですね。

菊池:僕自身そういう体験があったし、アルムナイについて調べていても、やっぱり「辞め方」が大事だと思いました。

だから、まずは自社で「良い送り出し方」をやろうということで、去年営業メンバーから「エンジニアに転身したいから辞めたい」と言われた時に、役員全員で彼の転職先を探したんです。

もちろん辞めてほしくはなかったですけど、かといって社内異動の可能性も見出せなくて。それならせめて良い転職先を見つけてほしいと考え、結果として人事の役員をやっているCDCアルムナイとつないで、無事採用してもらいました。

築山:すごいですね! 私は今日「#辞め方改革」と書かれたTシャツをきているのですが、アルムナイと企業が関係性を持つ続ける上で、辞め方/送り出し方は本当に大切だと改めて思いました。

>>後編「退職者が“会社公認のアルムナイ・ネットワーク”でやりたいこと「辞めた人との交流はむしろモチベーションアップになるのでは?」」に続く

オンラインセミナーの動画をご視聴いただけます

菊池さん、広中さんに登壇いただいたオンラインセミナー「退職者を “応援団” にする秘訣〜再雇用からビジネス連携まで幅広い繋がり〜」の動画はこちらからご視聴いただけます!

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