悪評、他の社員の退職、慰謝料、降格…… 退職時の不誠実な対応は超リスク! 今こそ考えたい、自社にプラスになる「社員の送り出し方」

経営者や人事の間で「退職した社員(アルムナイ)と関係を持ち続けること」に注目が集まっています。元社員を通じて新たな取引が生まれたり、プロジェクトにフィットした人を紹介してもらえたりと、先日行ったアンケートではアルムナイとの良好な関係がさまざまなメリットを自社にもたらすことがわかりました。

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アルムナイと良い関係で居続けるために重要なのが、「個人の辞め方/送り出し方」です。

退職者を見送った人に「良い辞め方・悪い辞め方」を聞いた前回のアンケートでは、「引き継ぎが不十分だった」など、仕事への責任感を疑われるような退職者の行動が、見送る人を不快にさせ、退職者への印象を悪くしてしまう原因であることが見えてきました。

>>円満退職のポイントはただ一つ!退職者を見送った人に聞く、「良い辞め方・悪い辞め方」

その一方で、アンケートの回答の中には「退職が決まった方への周囲の当たり方が悪かったことが退職者のモチベーション低下に繋がっていたのではないかと思う」という声も。退職者の良い辞め方には、「退職する社員の周りの人」の言動も関わってきそうです。

そこで今回は、退職経験者の声から「会社側の良い送り出し方」を探ります。

残る側と辞める側、退職に関して不快な思いをしている人の割合はほぼ同じ

前回のアンケートで「一緒に働いている人が退職する際に、その人の辞め方に対して不快な思いをしたことがありますか?」という質問に、「ある」と答えた人は62.2%。では、退職経験者の中に、「退職の意思を伝えてから実際に退職するまでの間に、不快な思いをしたことがある人」はどのくらいいるのでしょう?

「ある」と回答した人は55.4%と半数以上。残る側も辞める側も、退職に関して不快な思いをしている人が同じくらいの割合でいることがわかりました。

不快だった理由について聞いてみると、飛び抜けて回答が集まったのは、「怒られたり、辞めないように圧力をかけられたりしたから」(51.7%)と「退職の意思を否定されたから」(44.8%)の2つ。

退職の意思を伝える前に、ほとんどの人が今の仕事や今後のキャリアについて真剣に考えているもの。その決断に対する尊重の気持ちが感じられないことを残念に思う人が多いようです。

「自分で決めた次の選択を否定される言い方をされた

「退職理由にちゃんと向き合ってくれる人が少なくて哀しかった

「新卒で入社した会社を3カ月で辞める際、人事・上司双方から『今辞めてあなたが働ける会社なんてどこにもない』などとなじられた。ただでさえ心身ともに疲れ切っていたので、それでさらに落ち込み、しばらく転職活動する気にもなれませんでした」

退職したい理由と引き止めたい理由がマッチせず、無意味な時間を何時間もつかってしまった」

「引き止めという名目ではあったが引き止め方が下手くそ。あなた(上司)の下が嫌だからやめるのに。最後までズレてた」

「人事面談が不快だった。前向きな転職なのに、悪い原因を探るようだった

「辞めるのが迷惑なのは百も承知で、でも中途半端な気持ちで仕事なんてできないと思って退職の意志を伝え、了承してくれたにもかかわらず、かなり迷惑とあとから怒られました。最終的に二人でご飯に行き、快く送り出してくれたので結果オーライでしたが、イラつきを私にぶつけるのはやめてほしかった。気持ちはわかりますが」

「退職理由を説明しても勝手に解釈され、寄せ書きにも見当違いのことを書かれた」

他にフリー回答で目立ったのは、嫌がらせのような言動でした。

「退職を申し出てから、面倒な仕事を押し付けられた

いつまでたっても社内で公表されず、ギリギリまで引き継ぎができなかった

「急ぎではない雑務を振られ、重箱の隅をつつくような仕事のチェックをされたため、お盆休みをすべて出勤した

「退職を一旦は受け入れたにもかかわらず、早く終わらせられたはずの引き継ぎを引き伸ばされるなどの嫌がらせを受けた」

「余裕をもって退職意思を伝えていたにも関わらず、突然仕事を振られない、後任を決めてくれないといった対応をされた」

「退職の意思を伝えたところ、『悪口を言われるよ』と脅された

会社側がどういう意図でこれらの言動を行ったのかはわかりません。ただ、退職の相談や報告をした時に上司や人事が感情的になってしまった場合、その後たとえ普段通りに接していたつもりでも、相手から「もしかして嫌がらせなのでは?」と勘ぐられてしまうことはありそうです。

引き継ぎに関するエピソードも多く見られましたが、仮に引き継ぎの時間が十分に取れない事情があるのであれば、退職者に事情を説明したいところ。今後の業務にも大きく関わることですし、きちんと引き継ぎをしたいと思ってくれている退職者をないがしろにするような言動は避けましょう。

また、「退職が決まってから待遇が悪くなったから」(15.5%)「退職の手続きに不満があったから」(15.5%)に関連するコメントも多く集まりました。

「住民税の手続きに不備があった」

有給が消化できなかった

「早期退職の割増退職金の支払い対象外になる可能性があるとプレッシャーをかけられた」

退職の理由(家庭の都合)を人事担当者が他の社員に勝手に伝えていた

「有給消化もできないほど会社業務に貢献していたと思っていたが、勤続年数に応じたボーナス支給の締日までほんの少し足らなかったことで一切の支給がなくなった」

退職時の手続きをきちんと行うのはもちろんのこと、退職日を決める際にボーナスや退職金などの金銭面がどうなるのかまで説明ができると安心です。

その他、最終出社日の対応についてのこんな意見も。

「出社最終日に何も言われなかった。これまで辞める人には全員送別会をしていたのに、いっさいなかった。あからさまに上司の態度が冷たくなったと感じた

「最終出社日に各部署へお礼まわりをしようとしたら『誰にも何も言わずに定時になったら帰れ』と言われた」

最後の挨拶に行く日に、所属部署のメンバーが全員離席でいなかった。7年もいてお世話になったので、メンバー1人ずつに手紙も書いていたし、挨拶で渾身のメッセージを伝えようと考えてきたが、どれもかなわずお菓子を配っておわった。最後エレベーターに見送りに来てくれたのは、数人で、その日自分が辞めることも挨拶に行くことも知らされていないようだった。私の7年はこんなもので終わるんだなとむなしくなった

「終わりよければ全て良し」と言いますが、逆に終わりが悪いと、退職者はこれまで勤めていた年月を全て否定されたような気持ちになってしまうこともあります。「もう辞めるから」とないがしろにするのではなく、お互いに感謝を伝え合う場を用意したいところ。

送り出す側にとってはたくさんいる退職者の一人にすぎなくても、退職者にとって、退職は特別なことです。中には会社を辞めることに寂しさを感じていたり、仕事を最後までできないことに申し訳ない気持ちを抱いていたりする人もいるもの。

たとえ不満があって会社を辞める場合であっても、在籍年数が長ければ長いほど、なんだかんだいって愛着がある人は多いですから、最後は気持ちよく送り出してあげたいものです。

会社への悪評、他の社員の退職、慰謝料、降格……。退職時の対応の悪さがもたらすデメリット

退職の意思を伝えてから実際に退職するまでの間に不快な思いをしたことで、会社への気持ちはどう変わったのでしょう?

「好意が薄れた」「嫌いになった」と、会社への気持ちがマイナスになった人が半数以上。さらにその結果として、会社にとってのさまざまなデメリットが生じていることが判明しました。

「同僚に会社への不満を愚痴りました。同じように不満を持っていた同僚は、私の退職を受けてすぐに辞めました」

「今までは辞めたいと言った後輩はやんわりと引き止めていたが、止めなくなった」

「その会社を希望している人に『どのような人が働いているか』を聞かれた際、自分がされた事例を伝えた

「Twitterや『カイシャの評判』などの口コミサイトに悪評を書き込んだ

「慰謝料請求」

「退職後は今まで利用していたサービスをすべて同業他社のサービスに移行した」

「人事部長と社長に伝えた。当時の部長は2階級降格になった」

会社への悪評、他の社員の退職、慰謝料、降格……。退職時の対応の悪さは、単に退職者の会社への印象を悪くするだけでなく、会社の利益や評判をおとしめることにもつながっています。

これまでは個人の退職に関するやり取りが公になることはほとんどありませんでしたが、最近ではSNSやブログに「退職エントリ(辞めた経緯を記録したもの)」を書く人も増えました。

「どうせバレないだろう」「どうせ辞める人だから」という態度がどう広まるかがわからない今、「退職時の不誠実な対応」のリスクは増しています。

退職を引き止められるのは不快。でも、あっさり了承されるのも寂しい?

では退職者に対して、会社側はどのような対応ができればいいのでしょう?

「退職の意思を伝えてから実際に退職するまでの間に、一緒に働いている人からしてもらって嬉しかったことはありますか?」と聞いてみると、「ある」と答えた人は88.9%もいました。

嬉しかった理由として半数以上の人が選んだのは、「退職の意思を尊重してくれた」(64%)「退職することを残念がってくれた」(62.9% )「退職が決まってからも変わらず接してくれた」(51.7%)というもの。温かいエピソードがたくさん寄せられました。

「会社としての立場ではなく、私の人生にとってベストの選択であるかどうかを考えてくれた」

「『ひとりの人生』『ひとりのキャリア』として平等に話してくれた」

「どういう経緯で退職にいたったか、ちゃんと話を聞いてくれた

「『やめるのは残念だけどあなたのためにはいい選択だと思う』と背中を押してくれた

「決断に対して応援すると言ってくれた

退職を前向きにとらえてくれ、かつ寂しがってくれたこと。それがあったからこそ転職先でもがんばれています!」

「お前の人生だから、と悔しそうな表情を見せながらも次のキャリアを応援する発言をしてくれた」

「人材会社を辞めてライターになる旨を伝えたとき、『引き止めたいけどお前が決めたなら尊重するからやり抜け』と言ってもらえた」

「『今度も一緒にできることがあったら、よろしく』と連絡先を交換してくれ、次の仕事について応援してくれた」

「うちじゃできないチャンレンジがその会社ではできると思う、という上司からの一言」

「この会社からあんな良い会社に転職する人が出てくるとは誇らしいと言ってくれた

会社を去ることを残念に思いながらも、退職の意志を尊重し、損得勘定抜きに相手のキャリアを考える。そんな上司や同僚の態度を嬉しく感じたという人が多く見られました。

退職を過度に引き止められることを不快に感じる一方で、あっさり了承されてしまうのも少し寂しい。そんな退職者心理が垣間見えます。

退職するまでの間に同僚からしてもらって嬉しかったことが「ある」人の半数以上が「会社への好意が増した」と回答

そして、退職の意思を伝えてから実際に退職するまでの間に、一緒に働いている人からしてもらって嬉しかったことがある人の半数以上が、その結果会社への「好意が増した」「反感を持っていたのが改善された」と回答しています。

なかには「辞めた後も変わらず飲み会や集まりに声をかけ続けてくれる」といったコメントもあり、退職後にも良好な関係が続いている様子がうかがえました。

アルムナイと会社が良好な関係を保つことは、取引先が増えたりアルムナイからのリファラル採用につながったりといった業務上のメリットのほか、社員が仕事を頑張る糧にもつながります。

>>退職者との交流が「自社で頑張るモチベーション」になる?アンケートで見えたアルムナイとつながり続けるメリット

そして辞めてからも良い関係でい続けるためには、「退職者の辞め方」と「会社の送り出し方」の双方がとても重要です。本記事で紹介した退職経験者の実体験を参考に、「社員の退職」に関する自社の対応を見直してみてはいかがでしょうか。

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文:天野夏海

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アルムナビ編集長
2009年株式会社キャリアデザインセンターに新卒入社。求人広告営業、IT派遣コーディネーターを経て、働く女性向けウェブマガジン「Woman type」の編集者として勤務。2015年末に退職し、フリーランスに。2019年4月、業務委託でアルムナビ編集長に就任し、2020年10月より運営元の株式会社ハッカズークに“8割正社員”として入社。現在もキャリアデザインセンターの各種媒体の企画・編集・執筆にアルムナイとして携わる。