アルムナイ経済圏は1兆円以上!企業が退職者との関係構築に取り組むべき3つの理由

2019年に経団連会長やトヨタ自動車社長が「終身雇用を守るのは難しい」と明言し、名実ともに「1社に一生勤める時代」の終わりが見えてきました。ますます雇用の流動化が進む中で、企業は従業員との関係性や雇用の在り方に関して、変化を迫られています。

その際に考え直したいのが、アルムナイ(退職者/卒業生/OB・OG)との関係性です。その理由を3つのポイントから見てみましょう。

>>「アルムナイ」について詳しく知りたい方はこちら

理由1:年間1兆円以上のアルムナイ経済圏の存在

パーソル総合研究所の調査結果によると、アルムナイ経済圏は年間1兆1500億円を超えるとされています。これはアルムナイと企業、アルムナイ同士の取引総額ですが、アルムナイと企業間の取引だけに絞ってもおよそ4400億円にも上ります。

BtoB、BtoCの双方に言えることですが、卒業した元社員が自社のユーザーや顧客になることは多いもの。市場規模を考えても、アルムナイは無視できない存在です。

理由2:外部人材としての協業しやすさ

企業とアルムナイの協業には大きく2つのパターンが考えられます。

1. オープンイノベーションパートナー

オープンイノベーションを生み出すためには、当たり前ですがイノベーティブなアイデアを実行する必要があります。アイデアを生むためには社外との接点が重要ですが、社外の人は自社のカルチャーや力学を知らず、それゆえ実現性に乏く実行には至らないケースも。

そういう意味で、社内のことも、社外のことも知っているアルムナイは企業にとって最適なオープンイノベーションパートナーと言えます。

2. 副業・業務委託のパートナー

外部の人に業務を依頼する場合、相手にサービスややり方をキャッチアップしてもらい、その上で成果を出してもらうまでにはそれなりに時間がかかります。特にスタートして間もないころは、お互いの認識のすり合わせや成果物のフィードバックに時間を要するものです。

その点アルムナイであれば、基本的な説明を省くことが可能です。自社やサービスへの理解はもちろん、社内用語も通じるため、依頼する側のハードルがグッと下がります。

最近ではヤフーとユニリーバが副業人材の募集を開始。その対象にはアルムナイも含まれています。

「ギグパートナー募集開始」「ユニリーバ・ジャパン、「WAAP」で副業人材募集を開始」より

理由3:新しい採用戦略としての可能性

売り手市場が続く中で、従来のように就職サイトや人材紹介会社に求人を出すだけでは、人を採用するのは難しくなりました。ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、採用広報など新しい採用手法や戦略が登場する中で、「採用戦略としてのアルムナイ」が注目を集めています。

具体的には、大きく3つの可能性が考えられます。

1. 再雇用

企業がアルムナイに関心を持つきっかけの一つが再雇用です。カムバック採用やジョブリターン制度と呼ばれることもあります。

元社員ゆえにお互いの理解がある分ミスマッチがないこと、採用・教育コストが低いことから、再雇用を積極的に考える企業が増えています。

>>「再雇用制度」促進のカギは「アルムナイとの関係構築」にある?アンケートから見る、再入社の実態

>>再雇用制度がある企業一覧

2. 採用ブランディング

転職をするのが当たり前になったことで、求職者は自社内だけでなく、「その会社での経験を生かして社内外でどのようなキャリアアップができるのか」を気にするようになりました。

アルムナビが大学生に対して行ったアンケートでも、約9割もの人が「元社員の退職後のキャリアに関心がある」と答えています。

>>就活生は退職者の「客観的」で「リアルな意見」を求めている?アンケート結果から考える、“採用コンテンツとしてのアルムナイ”の可能性

つまり、卒業後に活躍しているアルムナイの存在が、求職者にとって魅力になるということ。実際に自社を卒業したアルムナイについて発信し、情報を可視化することで、採用ブランディングの一部として役立てる企業も出てきています。

>>「退職者の声」の重要性が増している?事例から考える、採用ブランディングとアルムナイの関係

3. 口コミの質&精度の向上

OpenWork」(左上)/「en Lighthouse(旧・カイシャの評判)」(左下)/「転職会議」(右上)/「glassdoor」(右下)

企業がコントロールできない口コミもまた、採用ブランディングの一部。新卒・中途の双方とも、候補者の多くは企業の口コミサイトをチェックしています。投稿された口コミの半分近くは、退職者が書いていると言われています。

そして、パーソル総合研究所が調査した離職者の口コミ投稿の経年試算によると、ネガティブな口コミはポジティブな口コミの7.4倍のスピードで蓄積することがわかっています。

だからこそ、アルムナイにポジティブな口コミを書いてもらうことが自社の印象を良くすることにつながります。

また、アルムナイが辞めた時期と口コミを書くタイミングには、タイムラグが生じる可能性もあります。どんなに働き方改革や労働環境の改善に力を入れていたとしても、それ以前に辞めた人から「当時の記憶や体験を基に口コミを書かれてしまう」こともあるわけです。

ポジティブかつ精度の高い口コミを書いてもらうためには、アルムナイとの良好な関係が不可欠です。そのポイントは「退職時の体験」と「退職後の交流」の2点。詳しくは以下記事で説明しています。

>>企業の評判、口コミを左右するのは「退職者」との関係性!ポジティブな投稿を増やす2つの対策とは

まとめ

採用候補者の選考や魅力付けに時間をかけ、入社後も研修や育成にコストをかけたのにも関わらず、退職を機にこれまで築いてきた関係をリセットしてしまうのは大きな損失。

また、人材の流動性が高まっていることに加え、コロナ禍でリモートワークの流れは一気に加速しました。正社員として一つの会社に勤めて、毎日オフィスに行くという常識も変わっていくことが予想されます。

そうなった時に、アルムナイをリソースとして捉える重要性は増していくはずです。退職で終わらない、企業と個人の関係性を作っていきましょう。