セプテーニグループアルムナイのベンチャーキャピタリスト・東明宏さんに聞く、アルムナイとつながり続ける企業の強さ

雇用や働き方のあり方が変わる中、企業と「アルムナイ(企業の退職者)」の新たな関係性に注目が集まっています。

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インターネット広告事業を主力とするセプテーニグループは、いち早くアルムナイとの関係性づくりに取り組み始めた先進企業の一つ。「セプテーニグループ・アルムナイネットワーク」を構築しています。

2017年にForbesが発表した「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家BEST10」にランキングされるなど、ベンチャーキャピタリストとして活躍するW ventures株式会社 代表の東 明宏さんも、セプテーニグループアルムナイの一人。

新卒で入社したセプテーニグループを退職してから10年以上が経過した今でも、古巣との交流が続いているという東さん。「古巣とつながるメリット」「アルムナイとつながり続ける企業の強さ」について伺いました。

※取材は感染対策をした上で実施いたしました

W ventures株式会社 代表パートナー
東 明宏さん

2004年、セプテーニグループに新卒入社。インターネット事業部、新規事業部などを経て、新設の子会社の責任者を務める。2009年に退職し、グリー株式会社にてプラットフォーム事業の立ち上げ/ゲーム会社への投資、グロービス・キャピタル・パートナーズにてベンチャー投資に従事したのち、W Ventures株式会社を起業。2017年Forbesが発表した「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家BEST10」でランキングされる。日本ベンチャーキャピタル協会「Most Valuable Young VC賞」、 Japan VentureAward2017「ベンチャーキャピタリスト奨励賞」等受賞

キャリアの中で最もツラかった、ジョイントベンチャー時代

——まず、東さんがセプテーニグループに在籍していた期間と当時の仕事内容を教えてください。

2004年にインターネット事業部に営業として新卒入社し、5年間在籍しました。入社当時は、まだDM発送代行事業が主力でインターネット広告事業は立ち上がったばかり。部署の人数は約40人と少なく、広い裁量を持ってガツガツと営業をしていました。

そもそも私がセプテーニグループに入社したのは、新規事業がやりたかったから。その頃は生意気だったし、上司との距離が近かったこともあり、事あるごとに新規事業の提案をしていたところ、3年目にようやく新規事業部への異動が叶いました。

それでも満足できずに、さらなるチャレンジをしたいという思いから「責任者をやらせてほしい」と要望を伝えたところ、3年目の終わりに社内ベンチャー制度の「ひねらん課」に配属されました。事業のアイデアを半年かけて構想し、役員を前にプレゼンする機会が与えられる制度で、期間中は新規事業に没頭できます。

そこで試行錯誤した結果、アイデアが採用され、私は新設の子会社の責任者となり、その後の2年間は自分の事業に集中していました。

——当時の経験から得た学びや経験の中で、特に今に生きていると感じるのは、どんなことでしょうか?

一つは、営業時代に経験したテレアポ。見ず知らずの人に電話をかけて、信頼を構築する過程を通じて、物怖じしない力が身に付いたと感じます。

もう一つは、退職前の2年間に注力していたジョイントベンチャー時代の経験。サービスを作って、営業をして、人を雇用して、利益を上げて、という起業のような体験をさせてもらったのですが、とにかく失敗の連続だった。でも、この失敗の数々が今に生きているなと思うんです。

正直、私のキャリアの中で最もツラかった時期でしたが、この経験があったからこそ、その後に転職したグリーやグロービスで成功体験が得られたと思っています。起業家に向き合うときもこの時の経験がベースになっています。

——現在、東さんはセプテーニグループとどのような交流がありますか?

お互いにビジネスの相談をし合うような交流関係がベースにありつつ、大きな接点としては、3〜4年前からセプテーニグループが主催する新規事業プランコンテストの審査員をさせていただいています。

辞めてからもセプテーニグループの人たちとたまに飲みに行っていたんですが、そのときに「審査員をやってよ」とお誘いいただき、お引き受けしたという経緯です。

——実際に、参加してみていかがでしたか?

審査スタイルがセプテーニグループらしいなと思いました。

私が「ひねらん課」で事業づくりにチャレンジしたときもそうだったのですが、プランそのものに加えて、パッションも表現しなくちゃいけない。「何がモチベーションなのか」がすごく問われるんです。どんな人が、どんな気持ちでやるのかを大切にする文化が根付いているのを感じました。

退職後10年が経っても「恩返しをしたい」と思う理由

——退職した人全員が、退職した会社と交流を持ち続けられるわけではありません。東さんが退職後10年が経った今でもセプテーニグループと交流を持てるのは、なぜだと思いますか?

温かく送り出してもらえたことが大きいと思います。ジョイントベンチャーは最後は事業を売却して精算するカタチになり、結果的に損失を出してしまった。申し訳ないという気持ちもありました。

それでも私のために送別会を開いてくれて、そこで「何かあったら戻っておいで」と声をかけてくれました。負い目がある中で、そんな温かい言葉をかけてもらい「何か返したい」という気持ちは辞めてからもずっとあるんですよね。

——だから、役に立てることがあれば引き受ける、と。

そうですね。コンテスト以外にも、セプテーニグループの人からいろいろ相談を受けたときは基本的にお受けするようにしています。逆に、広告ビジネスで儲けるベンチャーから相談を受けたときに相談をさせていただくなど、私もお世話になっています。

セプテーニグループは出戻りを歓迎するような社風なので、後ろめたさが先行するよりは、楽しく仕事をさせてもらったし、いい人たちだし、また一緒にできることがあれば、という気持ちですね。私が図太いだけかもしれませんが(笑)

——ベースに「セプテーニグループが好き」という気持ちがあるんですね。

もちろんです。生意気な社員だったにもかかわらず、かわいがってもらったし、とても感謝しています。

——アルムナイが辞めてもなお古巣企業に愛着を持ってくれているというのは、企業にとってもすごくうれしいことだと思います。

セプテーニグループは時代の移り変わりに合わせて事業体を変えてきている企業で、これからも変わり続けていくでしょう。そう考えると多様なネットワークを持つことは、セプテーニグループにとっての強みにもなるのではと思います。

アルムナイとの関係性を築ける会社と、築けない会社の違いとは?

——投資家という立場から見て、アルムナイとつながりを持ち続ける企業の強みはどのような点にあると思いますか?

優秀な人を活用できるチャンスが増えるというのはあるでしょうね。日本も徐々に欧米型のワークスタイルに変化しつつあり、若い人たちの意識も変わってきている中で、優秀な人材を一企業につなぎとめられなくなっていると思います。だったら、優秀な元社員を企業の資産にできる方がいいですよね。

仕事を依頼するにしても、過去に仕事を一緒にしていたアルムナイなら初期の目線合わせや期待値調整といったオンボーディングを効率的に行うことができます。企業に所属しているか否かにかかわらず、一定の信頼がおける相手にプロジェクト単位で仕事を依頼する雇用形態は、今後も増えていくと思います。

また、昨今の人材不足の状況を鑑みると、出戻りOKの文化がある企業はすごくいいなと思います。退職した当時はやりたいことと合わなかったとしても、また違うタイミングであれば噛み合うケースは実際にありますから。

——アルムナイと良い関係性を築ける会社と、そうではない会社があります。2つの違いは、どこにあると思いますか?

経営者のマインドに左右されるのでは、と思います。経営においてアルムナイと良好な関係を築いた方がよいと考える経営者は、出戻りも歓迎するし、アルムナイと積極的につながろうとするでしょう。

一方で、すごくピュアな経営者はそういうことがツライと感じるかもしれない。退職するということは「あなたと一緒に働くのは、私の人生にとっては違います」と突きつけられたというふうに考える経営者もいると思います。ある意味、退職を真正面から受け止めているわけです。それはそれで理解できます。

ただ、いずれにせよ優秀な経営者は人材を大事な資産だと認識していますから、基本的にはアルムナイとの関係性を構築していく方向に動いていくのではないでしょうか。

——アルムナイとつながり続けることは企業成長において合理的と言えそうですね。ただし、そのベースには人と人とのつながりやウェットな関係性が必要な気もします。

そうですね。私とセプテーニグループの関係性においても、メリットがどうとか、という感じではまったくありません。私としては、上司や先輩が育成に時間と手間暇をかけてくれた分、恩返ししたい気持ちが強い。

それに、セプテーニグループには独自のカルチャーが根付いていて、その空間にいたという経験は、辞めてからも共通点として色濃く残るんですよね。

セプテーニグループへの愛着と、育ててもらった感謝がベースにあり、だからこそ役に立てることがあれば協力したいし、これからもつながっていたい。そんなシンプルな構造が成り立っている気がします。

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取材・編集・撮影/天野 夏海 文/小林 香織