「上司が転職先を紹介してくれました」社会人2年目の若手が“理想的な円満退職”できた理由【私の退職体験記.1】

1社に一生勤め続ける時代が終わりを迎え、転職が当たり前になるということは、「会社を辞める」を経験する機会が増えるということ。でも案外、他の人がどんな辞め方をしているのかは見えないものです。

そこで連載「私の退職体験記」では、みんなの会社の辞め方を深掘り!

退職後も前職の同僚と良い関係でい続けるためには「辞め方」が重要だということがわかっています。どこでどう前職の人とつながるかがわからないからこそ、良い印象のまま会社を去りたいところ。そして古巣と良好な関係を保つことは、再雇用や業務委託など、いざという時のキャリアのリスクヘッジにもなり得ます。

円満退職できた人、悔いの残る辞め方をした人……。いろんな退職体験談から「よりいい会社の辞め方」のヒントを見つけましょう!

連載1回目に登場するのは、新卒で入ったHR系ベンチャーから、システム開発会社にエンジニアとして転職した目黒さん(仮名)。上司は目黒さんの退職の意思を尊重し、なんと転職先まで紹介してくれたのだとか……! これほど円満に退職できた要因は何なのでしょう?

PROFILE

目黒さん(仮名)

1994年生まれ。2018年4月、HR系ベンチャー企業に新卒入社。営業、エンジニア、採用担当などさまざまな業務を経験。2019年11月末退職し、2020年1月よりシステム開発会社にエンジニアとして入社。

「外に出た方がいい」と上司が背中を押してくれた

——目黒さんは新卒でHR系ベンチャーに入社して、2年弱在籍していたんですね。前職ではどのようなお仕事をしていたんですか?

メインは営業職ですが、異動や兼任が多かったので、採用担当者やエンジニアなどいろいろなことを経験させてもらいました。

——退職のきっかけは何だったのでしょう?

エンジニアに転身したかったんです。前職には総合職として入社していますし、お客さんと交渉したりビジネスサイドを見たりと、自分にプラスになることもたくさんあったので、営業職がメインであることを肯定的に捉えてはいました。

ただ、実は就活をしていた頃からエンジニアになりたくて。1年目の終わりに2カ月間だけシステム開発の仕事をやらせてもらったんですけど、その時が一番楽しかったんですよね。そんな気持ちを持った状態で、営業として数字のプレッシャーと戦いながら膨大なタスクをこなすのはしんどくて……。ある日、精神的なつらさから会社に行きたくなくなってしまったんです。

これはやばいと思って、急遽会社を休んで、その翌日に上司に退職の意向を伝えました。性格的にパッと決めて即行動するタイプなので、辞めることを決めてからの動きは早かったと思います。

——上司はどんな反応でした?

それまで急に会社を休むことがなかったので、「これは何かあるな」と待ち構えていた感じでした。だから驚かれることも、怒られることもなかったですね。むしろ協力的でした。

——協力的?

「エンジニアとして仕事をしたいから退職したい」と伝えたところ、すぐに経営陣を集めて社内で案件を探してくれたんです。退職の意思を伝えた翌日には、「やっぱり社内でエンジニアとしてやっていく道はないから、外に出る方がいいと思う」と背中を押してくれて。

——上司が部下の退職を引き止めることはあっても、退職の背中を押すというのはかなり珍しいと思います。なぜ辞めたいという意思を応援してくれたんだと思いますか?

上司の人柄は大きかったと思います。転職経験者だし、転職への理解もありましたね。会社としても人の出入りが激しいこともあって、「別の道に進みたいと思うのなら仕方がない」という感覚があるというか。あまり性格の悪い人がいないので、人の話を受け入れてくれる風土はあったと思います。

あとは、「エンジニアになりたい」という意思をしっかり伝えたことが大きかったかもしれません。今の仕事がしんどいという気持ちもありましたが、会社や上司のことが嫌いなわけじゃない。だからこそ、前向きな退職だということを強調したかったんです。

「次の会社決まってなくて大丈夫?」上司が転職先を探してくれた

——目黒さんの場合、退職を切り出した時点で転職先は決まっていなかったわけですよね。営業として膨大なタスクをこなしながら転職活動をするのは大変だったのでは?

実は、上司が転職先を紹介してくれたんです。最終的に決まったシステム開発会社も上司からの紹介です。

——上司から転職先を紹介してもらうって、初めて聞きました……!

やや複雑な気持ちでしたけどね(笑)。でもうれしかったし、すごく助かりました。いろんな人に連絡を取って2〜3人とつないでくれて。特にシステム開発会社はピンキリだと聞くので、上司から会社を紹介してもらえる安心感は大きかったです。

——転職先が決まったことを元上司の2人は何て言ってましたか?

「良かったね」と言ってくれました。面倒見の良い人たちなので、退職を切り出した時も、「何にも決まってないのに退職して大丈夫なのか?」って心配してくれていたんですよ。

普段からフランクに話せる関係性だったので、僕がやりたいことや合いそうな環境も知ってくれていたんだと思います。

——すごく良い関係性ですね。退職してからも前職と人たちとの関係性は変わっていないですか?

そう思います。年末にはエンジニアの先輩から飲みに誘ってもらって、すごくうれしかったですね。ほぼ未経験からエンジニアに転職するので、何かあったら頼りにしたい存在だなと思います。逆に「転職ってどうなの?」という話も結構聞かれるので、お互い話を聞きたい部分はあるのかなと。

前職は小さい会社なので普段からコミュニケーションは多かったですし、もともと人間関係はかなり良かったと改めて思います。それにベンチャーだから忙しいのは仕方がないですし、いくら仕事への不満があったとしても、会社や人を恨むのは違うだろうという気持ちもありますね。

「センターピンを外すな」転職時にも生きた、前職の社長の教え

——退職までの流れはスムーズだったと思いますが、悔いが残っていることはありますか?

引き継ぎがろくにできてない状態で辞めてしまったことは反省ですね。最終出社日に受注したくらいギリギリまで通常の営業業務をやっていて、「あとは任せた!」みたいな感じで終えてしまいました。

とはいえ、そうしないと仕事が回らないような状況ではあったので「じゃあどうしたらよかったのか」の答えは見えないですね。引き継いだ人には迷惑をかけてしまったと思いますけど、ベストを尽くしたとは思います。自分が退職することで同僚に負担がかかってしまうのは心配でしたけど、それはマネジメントの責任だと最終的には開き直りました。

——どうせ辞めるから仕事が回らなくても関係ないと気を抜くのではなく、最後までしっかり走り切ったんですね。

気を抜くような余裕はなかったです。周りも退職するからといって対応がおざなりになるようなこともなかったですし、普段通りに接してくれて、変に気を使われなかったのは心地良かったですね。

——周りの人たちが変わらず接してくれたのは、最後まで仕事の手を抜かなかったことが大きいのではと思いました。そういう目黒さんの仕事へのスタンスがあったからこそ、きっと上司も転職先を紹介してくれたんでしょうね。

そうかもしれません。前職では「カオスな状態をどうにかする」ことをいくつもやってきました。2カ月間エンジニアをやらせてもらった時も、未経験だったけど、ほぼ一人である程度のシステムを作ったんです。「分からないなりに自分でどうにかできるガッツがある」と思ってもらえたから、未経験でも紹介してもらえたところはあると思います。

——今後また会社を辞める時に生かしたいことや、「次はこうしよう」と思うことはありますか?

転職する予定がなかったとしても、ある程度外に目を向けておいた方がいいのかなと思いました。できれば転職先を決めてから退職を切り出したいですけど、僕の場合、辞めたい気持ちを抱えながら、転職先が決まるまで耐えて仕事をするのは無理だってことがわかりましたから。今回みたいに急遽辞めることになったとしても、すぐに次が見つかるような体制を整えておきたいです。

——これから退職しようとしてる人に伝えたいことはありますか?

「本当に外せないポイントは何なのか」を考える必要があるのかなと思います。転職を考えているってことは、今の職場に何かしらの不満を抱えていると思うんですけど、我慢できる不満と、我慢できない不満があると思うんですよね。

友達もちょうど転職を考えている人が多いんですけど、話を聞いていると、あれもこれも嫌だと話す人もいて。自分にとって大事なポイントを見極めないとうまくいかないような気がします。

——おっしゃる通りだと思いますけど、何でも不満に思う同世代の友人が多い中、どうして目黒さんはそういうふうに考えられているのでしょう?

前職の社長が「センターピンを外すな」とよく言っていたんです。大事なものを見失うなっていう意味合いで全社的に使っていたフレーズなんですけど、それが頭に染み付いているんだと思います。

結果的に会社を辞める決断にはなりましたけど、いろんなことを勉強させてもらって、前職を選んだことに後悔は全くありません。大学の友人の中には良い会社に入って高い給料をもらっている人もいるけれど、それは長期的に得られればいい。今の自分がやるべきことは何かを考えた時に、ぴったりの会社だったと思いますね。

円満退職のポイント

・本音の退職理由を伝える。ただし、伝え方には気をつける
・最後まで仕事の手を抜かない
・「本当に外せないポイントは何なのか」を考える

取材/文 :天野 夏海